突然好みが変わる、記憶欠落が起こる「解離性同一性障害」
今日は、「解離性同一性障害」という、一人の中にいくつもの人格が現れる病についてお話ししていくよ。
目次
解離性同一性(解離性同一症)障害
解離性同一性障害は、2つ以上の人格が1人の人物に共存してしまっている障害だよ。
表の顔、裏の顔、というわけではないんだよね。
そう。他の人から見れば「表の顔」「裏の顔」の差が激しいように見えるけど、人格の交代は本人の意図ではないんだ。
健忘? 交代中の記憶がない
解離性同一症の特徴は、複数の人格があること。とくに、別の人格の記憶がない場合が多いよ。
人格Aが出現しているとき、人格Aは人格Bの記憶がない、ということだよね。
そう。別人格のことを認識していないという場合がとても多いんだ。
自分が知らない自分がいる、ということは、本人にとっても周囲にとっても、大きな混乱につながるね。
そうだね。ほかにも、自分の発言・行動とは思えないことをしたり、突然態度・意見・好みが変わってすぐ元に戻る、といった症状がみられることも多いよ。
健忘
別人格のことを認識していないことが多い、ということは、記憶喪失に近い状態にもなるんじゃない?
そうなんだ。「突然見知らぬ場所にいた」「記憶にないのに自分がやったという証拠があった」などの形で、記憶の欠落に気が付くこともあるよ。
別の人格のときの行動を覚えていないから、覚えている人から指摘されるまで気づかないことも多そうだ。
別人格のことを認識している場合も
ただし、別人格を認識している場合もあるんだ。人格Aは人格Bのことを知っていて、人格Bの言動を覚えている、ということもあるよ。
別人格のことを認識している場合、人格同士でのやり取りがあるように感じることもあるみたいだね。
うん。人格同士の会話が聞こえたり、現在出現している人格に話しかけてきたり、ということもあるんだ。
これは統合失調症などの幻覚・幻聴とは違うのかな?
統合失調症などでは、幻聴・幻覚は自分以外の所作として感じるけど、解離性同一症では自分の頭の中から一時的に生じている、と感じるよ。
なるほど、自分の内部から話しかけられている感じがするのが、解離性同一症の特徴だね。
そうだね。また、こういった場合、本人は自分のことを「私たち」などの一人称複数形で呼んだり、「彼女」「彼ら」などの三人称で呼んだりすることもあるんだ。
なぜ一人称複数形や三人称で自称するのか、本人も気づかない、理解していないことが多いみたいだね。
自分を別人のように感じる「離人感」と現実感消失
解離性同一症では、自分の感覚が切り離される、離人感を訴える場合もあるよ。
「自分が出演している映画を見ている」「自分の体が別人のものになった感覚」という症状がある、ということだね。
そうだね。ほかにも、「よく知っている人なのに、知らない人のように感じる」「非現実的な環境だと感じる」というような、現実感の消失がある場合もあるよ。
どうして複数の人格が生まれるの?
そもそも、どうして複数の人格が生まれるの?
そうだね、解離性同一性障害の原因として、小児期のストレスが特徴的だよ。
虐待やネグレクト、ということだね。
うん。通常、生まれたての状態では人格というのは形成されていないよね。
うんうん、人格とか性格とかって、成長しながら作られていくもんね。
そう。その人格形成の段階である小児期に圧倒的なストレスを受けると、単一で、統合された人格を作る、という能力に影響が出てしまうんだ。
そうなんだ。。。小さな子供には、愛情と十分な安全が必要、ということだよね。
解離性同一症の対処
まず診断だけど、他の精神・身体疾患と区別をするために、しっかりと検査をする必要があるよ。
医師にしっかり診てもらうことが大事だ。
そうだね。また、催眠や鎮静薬などの方法で面接・面談をすることがあるよ。
別人格の出現を誘導する、ということだね。
そう。複数の人格が混在している、ということを証明する必要があるんだ。
治療法
治療は、複数存在している人格の統合、というのが目的だけど、必ず成功するとは限らないんだ。
もし統合が難しい場合はどうするの?
その場合は、人格同士とが協調性を持てるよう誘導していく、ということになるよ。
そのために、精神療法や催眠などを使用するんだね。
そう。薬物については、併発しやすい頭痛、 鬱、自傷行為などに対しては改善はできるけど、人格同士に影響を与えることはないんだ。
入院が有効なケースも
精神療法でも、治療中にトラウマがよみがえったり、別人格の存在に困惑したりということがあるよ。
自分が知らないことを自分がしていた、というのは向き合いにくいものだよね。
そう。そういった場合、何度か入院が必要になることもあるんだ。
自分の過去と向き合えるようになるまで、支持的な治療をしていくんだね。
うん。自分の心を落ち着けられる能力、過去を受け入れられるようにするための考え方といったことを、精神療法を通して身に着けていくことで、回復を助けるよ。