選択理論の考え方で問題に対処してみよう! ⑥ ~上司に怒られたが納得できない~
就労移行支援事業所 リスタート のSSTの中で、「選択理論」という考え方を紹介しています。
今回も、選択理論の10の原理に基づいて、職場で起こり得る問題に対処する方法を紹介します!
選択理論の10の原理
(1)私たちがコントロールできる行動は唯一自分の行動だけである。
(2)私たちが与えることができるもの、他の人から受け取るものはすべて情報である。その情報をどう処理するかは、それぞれの選択である。
(3)長期に渡るすべての心理的問題は、人間関係の問題である。
(4)問題のある人間関係は、常に私たちの現在の生活の一部である。
(5)過去に起こった苦痛は私たちの現在に大きく関係しているが、この苦痛な過去に再び戻ることは、いま私たちがする必要のあること、すなわち現在の人間関係の改善には貢献できない。
(6)私たちは、遺伝子に組み込まれた欲求、すなわち生存、愛と所属、力、自由、そして楽しみ、これら5つの欲求によって駆り立てられている。
(7)私たちは、上質世界に入っているイメージ写真を満足させることによってのみ、こうした欲求を満たすことができる。
(8)私たちが誕生して死を迎えるまでにできることはすべて、行為、思考、感情、身体反応、これらのうちいずれかの行動である。
(9)すべての行動は、動詞、あるいは不定詞や動名詞によって表現され、最も認めやすい要素によって呼ばれる。
(10)すべての行動は選択されたものであるが、私たちが直接コントロールできるのは行為と思考だけである。
Case6:上司に怒られたが納得できない
今回は、自分自身ではなく、後輩にアドバイスする、という形で選択理論を試してみようと思います。
Kさんは、ある会社でチェーンストアの店舗管理業務をしています。
Kさんは日常的にSNSを使って友人たちに情報発信をしているのですが、あるとき「自分の勤めている会社のことも知ってもらいたい」と考えました。
とある会議の日、「今日は非常に充実した会議だった。そうだ、会社の裏側についても知ってもらおう」と考えたKさんは、その会議の様子を写真に撮り、SNSにアップロードしてしまいました。
後日、Kさんは会社に呼び出されてしまいます。
なんでも、SNSにアップロードした写真に写っていたホワイトボードに出店候補地などの情報が含まれていたとのことで、始末書を書かなければいけないとのことです。
良かれと思ってしたのになぜこんなことになったのか、と戸惑うKさんですが、上司は「常識で考えればわかるだろう!」としか言ってくれず、納得できていません。
さて、もしもあなたがKさんの先輩(上司とは別人です)だとしたら、Kさんが納得できるように、どのように説明すればよいでしょうか。
選択理論で対処してみよう!
今回のポイントは、なぜ良くない行動だったのかをKさんが自己評価できるようにすることにあります。
「あなたの行動は間違っている」と叱るのは、外的コントロールに基づいた行動です。
「あなたは間違っている」という情報を一方的にぶつけても、それは相手の行動を変化させることにはなりません。
相手に行動を変えてほしいときには、相手自身が自分の意思で他の行動を選択できるようにしなければいけません。
しっかりとした説明がなかったり、感情的に怒られたりしても、人は中々納得することはできないのです。
会話サンプル
まずは、Kさん自身になぜ怒られたのかと考えてみるか聞いてみましょう。
恐らくこの時点では、
「良い会社だなと思ってもらいたくてアップロードしたのに、なんでこんなことになったのか・・・」
などという風に、納得のいっていないことが伺える回答が返ってくるのではないかと思います。
Kさんが納得できなかった大きな要因は、「常識で考えればわかるだろう」という伝え方で、しっかりとした説明がなかったことにあると考えられます。
Kさんを否定するのでなく、考えを受け止めた上で問題点の指摘をします。
「会社のためと思ってできることを考え、行動してくれたのは嬉しい。けれど、SNSでは例えばライバル会社などが見ている可能性もあるんだ。もしもKさんがライバル会社の重要な情報をSNSで見つけたら、どうするかな?」
例えば、このような伝え方をすれば、何が問題点であったのかがわかり、そこから起こり得る事柄についても予想しやすくなるのではないでしょうか。
このようにKさんの元に情報が集まれば、「SNSに情報をアップロードするのは危険だからやめよう」という選択を、Kさん自身の意思で選ぶことができるようになるのです。
コントロールできるのは自分だけ
いかがでしょうか。
今回は、他者に考え方を変えてもらいたいときのことについて考えました。
とはいえ、前提として「コントロールできるのは自分だけ」です。
ここで紹介したような方法で情報を伝えれば、必ず相手の行動が変わる、というわけではありません。
相手がどう考えているのか、どういったことに納得がいっていないのかを確認して、相手の持っていない情報を伝えること。
私たちが自分以外にできるのはそれだけなのです。
不自由に感じるかもしれませんが、ただ相手の良くないと思っている点を指摘するよりも、ずっと相手は受け入れやすくなるはずですよ!