「聞く」と「聴く」
心を聴くということ
「きく」という言葉には2つの漢字が当てられます。
「聞く」と「聴く」ですね。
今回は、これら2つの漢字の表す意味の違いを考えていきたいと思います。
「聞く」は言葉のやりとり
話を聞くことくらい、誰にでもできると感じている人もいるかもしれません。
普段から、相手の話を聞き、自分の言いたいことを伝える”会話”ができている以上、今さらどうして聴き上手を目指す必要があるのでしょうか。
普段の会話では、話し手の声を耳で聞き、伝えたいことの内容を理解しています。
例えば、「今日は雨ですね」と言われたのを聞いたら、「今日は雨が降っている」という情報を受け取ります。
しかし、時にはこれだけでは足りない場合があります。
「聴く」は心のやりとり
話し手が「今日は雨ですね」と言ってきたのは、ただ雨が降っているということを伝えたかっただけなのでしょうか。
もしかしたら、これから出かけるのがおっくうであるということを伝えたかったのかもしれません。
それであれば、ただ雨が降っているということに反応するよりも、「出かけるのがおっくうですよね」といったように相手が思っている気持ちに寄り添うほうが、相手は嬉しく感じます。
あるいは、最近買ったおしゃれな傘を使えることが嬉しいのかもしれません。
この場合であれば、「出かけるのがおっくうですよね」と伝えるよりも「うれしそうですね」などと返した方が相手の気持ちに寄り添えているでしょう。
聞くと聴くの最大の違いが、このような相手の気持ちに心を傾けるかどうかです。
漢字を見てもわかる通り、「聞く」には耳という漢字しか入っていない一方で、「聴く」には耳と心の二文字が含まれています。
相手の表情や声などの非言語情報から気持ちを推し量り、そこに寄り添うのが「聴く」ということなのです。
事務的な連絡などをする場合には、そこで伝えたいのは言葉の内容そのものでしょう。
一方で、”おしゃべり”をするときには、多くの場合本当に伝えたいことは事実よりもそれに対する気持ちの部分です。
表面的な情報のみに反応していると、相手は自分のことをわかってくれていない、関心を持たれていないというように感じてしまうことがあります。
相手はどのような気持ちなのか、その心に意識を向けて話を聴くことで、人との仲は近くなっていくのです。