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発達障害ってどんな病気?④ ~アスペルガー症候群の特徴~

前回までの記事はコチラ↓

第50回 教えて!リス太くん

今回は、自閉症スペクトラム障害の中の一つ、アスペルガー症候群について、詳しく説明するよ!

アスペルガー症候群とは

発達障害ってどんな病気?②では、自閉症についての説明を行いました。

アスペルガー症候群は自閉症とよく似た障害ですが、どのような違いがあるのでしょうか?

自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりで、どこかで厳然と二つに分かれるものではありません。

幼児期には典型的な自閉症の特徴を持つ子どもが、思春期になるとアスペルガー症候群の特徴が目立ってくる場合もあります。

強いて区別して言えば、アスペルガー症候群の子どもや大人は、

一見して障害があるようには見えないことが多いです。

「ちょっと変わった子だな」「内気な性格なのかな」と判断され、障害の診断を受けずにそのまま成人してしまう事もあります。 

話もできますし、勉強なども人並み以上にできることがあります。

また、人前で独り言を言ったり常同運動をしたりすることは稀です。

そのため、一見自閉症にみえない自閉症といっても良いでしょう。

アスペルガー症候群と自閉症、そしてそのどちらの特徴も持っている場合も合わせて、「三つ組」と呼ばれる障害を持つものを、自閉症スペクトラムと総称します。

「三つ組」に関しては、後ほど説明をしていきます。


アスペルガー症候群を発症する原因は、何らかの理由によって脳に微細な損傷が生じたことなのではないかと推測されています。

理由として、脳波異常が多く認められることや、脳画像検査において社会性に関係する部位の体積減少が認められることが挙げられます。

アスペルガー症候群の人は100人に1~2人の割合で、男性の方が女性よりも数倍多いとされています。

また、アスペルガー症候群には知能の低下は認められないという特徴があります。

それどころか、単純なIQだけを見れば通常よりも高い事すらあります。 

言葉による会話能力があるにも関わらず周囲の人間との交流が難しいなど、生まれつき社会性の低下が認められるほか、

「相手の立場に立って考えられない」

「場の雰囲気を読めない」

「自然なコミュニケーションが行えない」

といった症状があり、またそれによって生活に様々な支障を来たしている・・・

そんな方が、アスペルガー症候群であると言われています。


 しかし、これらのような障害は、周囲の人から「本人の努力不足」と思われがちです。

現状では、これが多くのアスペルガー症候群の方が苦しむ要因となってしまっているのです。

アスペルガー症候群の症状「三つ組の障害」

Ⅰ.対人関係の障害

「人付き合いが上手く出来ない」という事です。

アスペルガー症候群の方は、相手と程よい距離間を持って

自然なコミュニケーションを取ることが苦手になります。

具体的に言うと、人と話している時に、 

  • 目が泳いでしまう、視線が不自然
  • 場にそぐわない表情をしてしまう
  • 対話する距離感が近すぎる

などといった症状が認められます。

これにより相手に不自然な印象を与えてしまい、対人関係がうまくいかなくなってしまうことがあります。

また、手紙などの文章によるコミュニケーションは良好に行える事が多いのも特徴です。

言葉によるコミュニケーションも表面上は行えるのですが、言葉をそのまま「文字通り」素直に受け取ってしまうため、行間を読むのが苦手です。

「場の空気を読む」「行間を読む」という事が出来ないため、冗談が通じず、冗談で言ったことを素直に真に受けてしまう事があります。

また、身振りや表情で伝えたり、アイコンタクトで伝えあったりということも困難です。

Ⅱ.想像力の障害

 アスペルガー症候群では、相手の立場で考える事が困難だと言われています。

これは「心の理論の障害」と呼ばれることもあります。

相手の立場で考えるいうのは、相手の気持ちになることで、

「もし自分が〇〇さんだったら、これをされたらイヤだな」

「これをされたらとても嬉しいな」

なとどいうふうにと考えて、相手に対して気遣いをすることです。

しかし、アスペルガー症候群の方はこれがとても苦手なのです。

そのため、時に人を傷付けてしまうことがあります。

例えば太った人に対して素直に「太っているね」と言ってしまうことがあります。

その言葉が、人を傷つけるということに鈍感なのです。

また、相手と気持ちを「分かち合う」ことも苦手です。

喜びや達成感をともに分かち合うという事が上手くできません。

「空気を読まない」「人に気を遣わない」という悪意があるわけではありません。

「やらない」のではなく、「できない」のです。

Ⅲ.限定された興味・こだわり

アスペルガー症候群の方は興味が極端に偏っていたり、こだわりが非常に強いことが多くあります。

特定の領域に関して非常に優れた能力を発揮する事を、「サヴァン能力」と呼びます。

アスペルガー症候群には有名人・著名人が少なくないのですが、これは興味やこだわりの強さが良くはたらいた例になります。

一方で、興味やこだわりが悪い方向に向いてしまう事もあります。

些細なこだわりを曲げることができずに人を衝突してしまったり、他者から見ると不要と思われる儀式的な行動を行わないと気が済まない、などといった症状となって表れることもあります。

Ⅳ.その他の症状

それ以外に、

  • 不器用:細かい作業が苦手であったり、運動神経が悪い
  • 感覚過敏:細かい物音が気になったり、特定の肌触りの服しか着れなかったりする

などといった症状が現れることもあります。

アスペルガー症候群は何が問題なのか

アスペルガー症候群の根本となる症状は「社会性の低下」です。

社会性とは、社会(集団)の中で生きていくに当たって必要な能力の事で、

 

  • 人と適切なコミュニケーションが取れる
  • 場の空気を読んで適切に行動できる
  • 相手の立場になって考えることができる

といった能力を指します。

アスペルガー症候群とはじめとする自閉症性スペクトラム障害は、主に社会(集団生活)における対人関係において支障を来たし、本人はそのことで大きく苦しみます。

これはもちろん本人の努力不足ではありません。

本人は精一杯努力しているのですが、それでも上手く出来ないのです。

そのため、ひどく苦しみ、どうしたらいいのか分からなくなってしまい絶望してしまうこともあります。

「本人が努力すれば治る」というものであればそれは障害ではありません。

アスペルガー症候群の場合、脳の微細な異常が指摘されていることからも分かる通り、

本人の努力だけで解決するものではありません。

努力しても人付き合いがうまくいかないとなると、社会的に孤立してひきこもってしまったり、

学校や仕事が続けられずに不登校や出社不能になってしまったり、

上手くいかずに悩んだりといったことが生じます。

このような出来事は精神的に大きなストレスになりますので、

このような精神的ストレスから二次的にうつ病や不安障害、強迫性障害などの疾患を合併してしまう事もあります。

 

アスペルガー症候群は先天性の障害であるため、残念ながら根本を治すことはできません。

しかし診断をすることで、

「自分の努力不足なのではないか」

「自分が甘えているのではないか」

といった本人の心の重荷が取れることがあります。

また、診断を受けることで医療や福祉から適切なサポートを受けられるようになり、これが生活の改善につながる事もあります。

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