認知行動療法講座「認知の歪み①」

認知行動療法講座

現在、高田馬場の就労移行支援事業所 リスタートでは、リモートによるプログラムを行っています。

今日は、認知行動療法のプログラムを行いました。

前回は、認知行動療法とはどのようなものかという部分から、気分と自動思考の関係までを復習しました。

今回は、認知行動療法の重要な要素として繰り返しお話している「認知の歪み」について復習していきます。

認知の歪み

前回、「なんだかつらいな」といったようなモヤモヤした気持ちを分析し、ネガティブな感情の原因となっている自動思考を見つける、という話をしました。

そのようなネガティブな感情が浮かぶ原因となる考え方には、いくつかのパターンがあると考えられています。

そのパターンこそが、認知行動療法において「認知の歪み」や「考え方のクセ」と呼ばれているものです。

どの認知の歪みにも共通しているのが、物事を認知するときに、悪い側面ばかりを捉えるようになってしまうということです。

代表的なものについて、今回と次回で詳しく説明していきたいと思います。

1.白黒思考

すべてを白か黒かで考え、グレーな状態を許容できない認知の歪みです。

0か100か思考というような言い方をする場合もあり、これも同じく0でも100でもない1~99の受け取り方ができないということを指します。

言い換えれば、「完璧でなければ失敗だ」ということでもあり、いわゆる”完璧主義”な人はこの認知の歪みを持っていると考えられます。

この自動思考を持っていると、完璧な成果を求めて努力するため一件良いように見えるのですが、現実として100%の成功というのはほぼほぼ起こり得ません。

その結果、9割うまくいったとしても1割のうまくいかなかった部分が気になり、「失敗した」と捉えてしまうため、日々”失敗”の記憶が積み重なり、自信を失くしてしまったり、憂うつになってしまったりするのです。

2.極端な一般化

1度や2度起こっただけの失敗や悪い出来事を、常にそうなるものだと考えてしまう認知の歪みです。

わかりやすいキーワードとして、「いつも」や「絶対に」という言葉が挙げられます。

一度ミスをしたことで「自分は絶対に昇進できない」と思い込むとか、言い争いになった後に「あの人はいつもあんなことをする」というのは極端な一般化が含まれている考えだと言えるでしょう。

実際には、過去を振り返ると毎回失敗しているわけではなく、うまくいっていることもあるはずなのですが、極端な一般化を持っているとその記憶を思い出すことができません。

その結果、「これまでもダメだったし、これからもうまくかないだろう」という捉え方になってしまうのです。

3.心のフィルター

物事の悪い面にのみ注目し、良いことがまったく意識できなくなってしまう認知の歪みです。

実際には、悪いこともあれば良いことも起こっているはずなのですが、一点の「悪いこと」がずっと気になってしまい、他の良かった点を台無しにしてしまいます。

例えば、仲の良い人たちと集まって食事を楽しんできたはずなのに、その中で言われた言われたくなかった一言が気になって、食事会そのものが悪い思い出となってしまっているのであれば、心のフィルターが働いてしまっているのでしょう。

心のフィルターが働いている限りは、どんな良いことがあってもそれを受け止められないため、どんどん気分が落ちていってしまいます。

4.マイナス化思考

心のフィルターは「良いことが見えなくなる」ものですが、マイナス化思考は「物事に悪い意味を付け加える」ものです。

仕事がうまく行ったにも関わらず、「これくらい誰でもできる。だから良い成果だなんて言えない」とか、「これで前にミスをした分の補填にはなっただろう」とか考えて、「成功した」と認めないのが心のフィルターです。

あるいは、子どもから「友達がおもちゃを買ってもらった」という話を聞いて、「私の甲斐性のなさを不満に思っているのだ」と感じたならば、これもマイナス化思考によるものと言えるでしょう。

純粋に今日あったことを話していたとも考えられる子どもの話に、「自分を責めているのだ」というマイナスの解釈を加えてしまっているのです。

5.結論への飛躍

明確な根拠があるわけではないにもかかわらず、結論を決めつけてしまう認知の歪みです。

大きく分けて、「心の読みすぎ」と「先読みの誤り」の2つに分けることができます。

それぞれ「他者の考え」と「未来」が対象となっていますが、このどちらにも共通するのが、「根拠を導き出すことが不可能である」という点です。

他の人が「言ったこと」や「やったこと」は事実ですが、「何を思っていったのか」「何のためにやったのか」は当人にしかわからず、すべて推測に過ぎません。

また、今現在がどんな状態であろうとも、将来どうなるのかということへの根拠にはなり得ません。

そのため、「他者の考え」「将来のこと」は常に様々な可能性が考えられるのですが、その中の1つである「悪い可能性」しか見えなくなり、そうに違いないと決めつけてしまうのが結論への飛躍なのです。

 

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