リス太と学ぶ認知行動療法 ~声の外在化~

前回までの「リス太と学ぶ認知行動療法」はこちらから

さて、前回、歪みを取り除く15の技法のまとめをしたわけだけど、今回はその中の1つ、二重の基準技法についての話だよ。
二重の基準技法っていうと、苦しんでいる友人に対してするような、優しく、同情心のある態度を自分に対してもするっていう感じだったよね?
そうそう。その、「友人や大切な人への基準」と「自分に対しての基準」が二重の基準っていうわけだね。
でも、友人に対してどんなふうに語り掛けて、自分に対してとはどう違うのかって、中々想像できなくて・・・。
そんな時に役立つのが、「声の外在化だよ!」

 

声の外在化

「声の外在化」ってどんなもの?
これは、いわゆる「ロールプレイング(役割演技)」を使った方法だよ。
ロールプレイング! それには、どんな効果があるの?
これによって、「頭ではわかってるんだけど」っていう『知的理解』を、自然と受け入れられるように『感情変化』に変えることができるんだ。
声の外在化ってことは、ええと、実際に声にして、頭の中から外に出す、っていうイメージかな。
おっ、スルドイね! その通り。動揺の原因となる否定的、自己批判的な思考を外に出して、それを他人のように見立てて反論するんだ。
他人のように見立てる・・・。
声の外在化は、自身の自己批判的思考をリストにすることから始めていくよ。
まずは、K君が困難に直面して、落ち込み、自分が他人よりも劣っていると考える状況にあると仮定しよう。
うぅ、僕は賢くないし、魅力もないし、出世もできないんだ・・・。
そうしたら、どんな否定的思考が出てきたかな?
えーと、そうだね。
  1. 他の人たちが僕の本当の姿を知ったら、軽蔑するだろう。
  2. 他の人々は僕よりもずっと賢い。
  3. 僕はいつも失敗ばかりしている。
  4. 僕は敗者で、ダメな人間だ。
  5. 僕はいつもこんなに落ち込んでいてはダメだ。どこか自分に欠陥があるに違いない。
  6. この先、僕が健康になることはないだろう。
  7. 僕は欠陥人間で、他人よりも劣っている。
  8. 僕には、十分な知恵も賢さもない。優れたユーモアのセンスがない。
こんな感じ?
おお・・・たくさん出たね。
それじゃあこの否定的思考について、声の外在化をしていこう

パートナーと協力して声の外在化をやってみよう!

この練習には、協力してもらうパートナーが必要なんだ。
パートナー?
うん。今回は僕が協力するね。
一人で二重の基準技法に挑む場合には、次回他の方法を紹介するよ!
よろしくお願いします!
さて、それじゃあやり方だけど、パートナーである僕が「否定的思考」の役、K君には「合理的思考」の役をやってもらうよ!
ロールプレイだね? ・・・って、思考の役?
その通り。僕はこれから、K君が出してくれた否定的思考を一人称で言うから、K君はそれに対して、落ち込んでいる親友に話しかけるつもりで二人称で話しかけてみて!
ええっ!? うーん、わかったよ。やってみる。
それじゃあ、行くよ?
「僕は敗者なんだ!僕は健康になれることもなく、ずっと辛いままだ!僕は欠陥人間で、人より劣っていて、いつも失敗ばかりだ!」
「そんなことないよ!欠点なんて誰にでもあるし、その一方でキミにも長所はいっぱいあるじゃないか!だいたい、敗者って何の敗者なんだ!勝ち負けなんてどうでもいいじゃないか!自分を過小評価しちゃいけないよ!」
うんうん。いい調子だよ、K君
あっ・・・僕、つい熱くなっちゃって。
どうだったかな?僕が言ったのは、K君が考えていたことだよね?
うん・・・そのはずなんだけど、他の人の言葉として聞くと、つい反対したくなったというか・・・。
ね? こんなふうに、人には他人用の現実的で思いやりにあふれた基準があるんだ。
確かに、他の人が落ち込んでいるようなときは、完璧を求めたりなんてしないし、優しく接しようとするね。
でも、自分自身に対してはまったく違う基準を当てはめて、完全を求めてしまうんだ。
人に優しく、自分に厳しく・・・っていうやつだね。
その考え方をすべて否定するつもりはないけれど、自分に厳しくし過ぎて辛くなってしまうのであれば逆効果だよね?
確かに・・・。自分を甘やかしちゃいけないと思ってたけど、甘やかすのと、辛く感じている時に優しくするのとは別だよね。
そうなんだ。だから、苦しんでいる時には、「他人にも、自分にも優しく」!
自分を含むすべての人に対して、公平で、現実的で、思いやりのある基準で接するようにしよう!

 

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