失踪、記憶喪失。。。ストレス反応の一種「解離性遁走」

前回は、特定の出来事のみを忘れてしまう「解離性健忘」についてお話ししたね。
今日は、失踪、記憶喪失といった「解離性遁走」の症状、経過についてお話ししていくよ!

 

ストレスから逃れるための、「別の自分」

解離性遁走は解離性健忘と似ていて、過去の一部が認識できない症状があるんだ。
解離性健忘とはどう違うの?
解離性健忘は、過去の一部の記憶がなくてもアイディンティティは一つだよね。
解離性遁走では、自分が自分であることを忘れたり、新たな自分を形成したりするんだ。
別人になっちゃうってこと。。。?
そう。
よく、失踪、突然の家出、という形でいなくなってしまって、全く別の場所で、全く違う人として生活している、という形で表れるよ。
それまでの自分のことを忘れてしまっている、ということだね。
そういうこと。
たとえば、経営が苦しくなった会社の代表者が、突然失踪して田舎で農家として暮らしていた、という形があるよ。
名前や人格なども別人になってしまう、ということかな。
そう。この症状は数時間で収束することもあれば、数か月から数年と長期化することもあるんだ。
ふむふむ。
また、2回以上の遁走が発生している場合は、解離性同一症という、多重人格障害が原因であることが多いんだ。

別人になりたい、と思うほどの強いストレス

そもそも、解離性遁走はどうして怒るのかな?
原因としては、極度のストレス、というものがあるよ。
さっきの例だと、経営が苦しくなった、などだね。
そう。戦争や事故、災害などもあるし、親しい人の死、虐待なども考えられるね。
なるほど。
いうなれば、とても耐えがたい苦痛・ストレスから逃れるための、唯一の手段、ということ。
ふむふむ。
辛いことから逃げたい、というストレスが反映されてしまったということだね。
そうだね。
場合によっては、自殺や、殺人衝動などに対する代替手段として、遁走が発生することもあるよ。

遁走の収束

重度のストレスからの逃避手段だったとしたら、遁走前の自分を思い出すのってかなり大変なことだよね。
そうなんだ。遁走が収束するということは、自分が過去のことを忘れていた、というのを理解するよね。
そうすると、恥ずかしいと思ってしまったり、抑うつ、苦悩、ひどい場合は自殺や暴力などの手段をとってしまうこともあるんだ。
忘れていた過去、辛いことと向き合うのって、大変だね。。。
うん。突然過去を思い出すこともあって、「自分が知らない場所にいる」と気づくまで、解離性遁走と診断されないことも多いんだ。

診断から治療まで

遁走の大半は短期間で自然に過去のことを思い出して、終息後の混乱や抑うつも軽度だよ。
ただし、長期間に及んでしまった場合、記憶の回復や自己同一性と向き合うのが困難になってしまうんだ。
長期化するのを防ぎたいね。
うん、でも進行中の遁走は、発見するのが難しいんだ。
突然「知らない場所にいる」と気づくまで発見されないことも多いんだったね。
そう。自己同一性に混乱していたり、同一性の欠如に困惑したり葛藤があったりする場合は、解離性遁走が疑われるよ。
もし解離性遁走の可能性がある場合は、どのように治療していくのかな。
医師は通常、まず遁走する前の経歴と、遁走後の新たな生活の形成過程を調べるよ。
そのあとで精神療法を行っていくんだ。
まずはまったく別人になってしまったということの情報を集める、ということだね。
そう。
情報が集まってきたら、遁走に至った理由を解明したり、記憶を回復させるための環境を整えたりしていくよ。
そのあとで精神療法を行うんだね。
そういうこと。催眠法、薬剤を使って催眠状態にして記憶を引き出すこともあるよ。
解離性健忘のときも催眠状態で引き出す治療があったけど、症状が出ている間は記憶回復は難しそうだね。
そうなんだ。
進行中の遁走の場合、記憶を回復しようと治療しても失敗してしまうことが多いんだ。
遁走前の同一性を思い出すには、どうしたらいいかな?
そうだね、まずは遁走の原因を解明しておくこと。
そして、記憶が戻ってきたときの本人の葛藤、苦悩などへの対処方法も見つけておくことだね。
本人のストレスになったことを理解しておくことで、次の遁走を防ぐこともできそうだね。
うん。本人が安心して記憶を取り戻せる環境、安全に過ごせる環境を整えておくことが大事だよ!

 

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