選択理論の考え方で問題に対処してみよう! ①
就労移行支援事業所 リスタート のSSTの中で、「選択理論」という考え方を紹介しています。
選択理論の10の原理に基づいて、職場で起こり得る問題に対処する方法を紹介します!
目次
選択理論の10の原理
(1)私たちがコントロールできる行動は唯一自分の行動だけである。
(2)私たちが与えることができるもの、他の人から受け取るものはすべて情報である。その情報をどう処理するかは、それぞれの選択である。
(3)長期に渡るすべての心理的問題は、人間関係の問題である。
(4)問題のある人間関係は、常に私たちの現在の生活の一部である。
(5)過去に起こった苦痛は私たちの現在に大きく関係しているが、この苦痛な過去に再び戻ることは、いま私たちがする必要のあること、すなわち現在の人間関係の改善には貢献できない。
(6)私たちは、遺伝子に組み込まれた欲求、すなわち生存、愛と所属、力、自由、そして楽しみ、これら5つの欲求によって駆り立てられている。
(7)私たちは、上質世界に入っているイメージ写真を満足させることによってのみ、こうした欲求を満たすことができる。
(8)私たちが誕生して死を迎えるまでにできることはすべて、行為、思考、感情、身体反応、これらのうちいずれかの行動である。
(9)すべての行動は、動詞、あるいは不定詞や動名詞によって表現され、最も認めやすい要素によって呼ばれる。
(10)すべての行動は選択されたものであるが、私たちが直接コントロールできるのは行為と思考だけである。
Case1:先輩が結果を独り占めしてしまう。
Kさんは、企画部で働いている入社2年目の社員です。
Kさんにはある悩みがあり、最近やる気を失ってしまっています。
同じ職場にRさんという先輩がいるのですが、Kさんが考えた企画やアイデアを、Rさんがすべて自分の発案として上司に披露していると感じているのです。
つい昨日も、Rさんが上司に
「この前、Kと話していたら面白いアイデアが出てきたんですよ。これはちゃんと形にしたらよくなるだろうと作ってみたら、中々良い企画ができました。ちょっと見てもらえませんか」
と言っているところを聞いてしまいました。
KさんはRさんに抗議したのですが、
「参考にはしたけれど、君のアイデアのままでは企画として形にはなっていなかったじゃないか。むしろ、なくなるはずだったものがちゃんとした企画になって通ったんだから、良かったじゃないか」
と言われてしまいました。
上司も、企画を誰が発案したかについて気にしている様子はありません。
さて、Kさんの視点から、選択理論の考え方を使ってこの問題に対処してみましょう。
選択理論で対処してみよう!
この問題を解決するためのポイントが3つあります。
①:満たされていない欲求を把握する
②:欲求が満たされていない原因を考える
③:「コントロールできること」「コントロールできないこと」を区分する
順番に考えてみましょう。
満たされていない欲求を把握する
まず、5つの基本的欲求について復習してみましょう。
生存の欲求
飲食、睡眠、生殖など、いわゆる三大欲求と呼ばれるものを含む身体的な欲求です。
身の安全や、健康でいることへの欲求も含まれます。
愛・所属の欲求
誰かと一緒にいたい、繋がっていたいといった欲求です。
力の欲求
認められることや、誰かに勝つことへの欲求です。
自由の欲求
自分のやりたいようにしたい、という欲求です。
楽しみの欲求
新たな知識を得ることや、何かを新たに創り出すことへの欲求です。
この中で今回満たされていないと考えられるのは力の欲求です。
欲求が満たされていない原因を考える
今回問題となっているのは、「先輩が自分の発案のようにして」しまっていると感じていることです。
ということは、「自分のアイデアが認められていない」「自分が評価してもらえていない」ことが、力の欲求が満たされず、気分が落ちてしまっている直接の原因と言えるでしょう。
「コントロールできること」「コントロールできないこと」を区分する
「選択理論の10の原理」にある通り、私たちがコントロールできることは、「自分の行動」だけです。
より細かく分類するなら、直接コントロールできるのは、動いたり話したりといった「行為」と、頭の中で何か考える「思考」の2つのみなのです。
一方でコントロールできないことは、先輩や上司の行動です。
先輩に発案をやめさせたり、上司に誰が発案者かを気にするようにさせるといったことはできません。
対処例
では、実際の行動を考えてみましょう。
今回の問題を解決するための行動の例は、「直接上司に企画を発案してみる」ことです。
発案してみて企画が通れば、Rさんにアイデアを取られることもなく、欲求が満たされるでしょう。
一方で、もしも企画が通らなければ、Rさんの言っていた「そのままでは企画として形にはなっていなかった」という言葉が正しかったのかもしれません。
それであれば、「本などで勉強し、より良い企画を出せるようにする」なんて行動に移ってもいいですし、「Rさんに相談して、良い企画の作り方を学ぶ」という選択肢もあるでしょう。