自分の人生を支配している「思い込み」 ⑥ ~行動を駆り立てる”ドライバー”~
就労移行支援事業所 リスタート では、毎週金曜日に自己分析講座をやっています。
自己分析講座では、「自分を知り、人に説明できるようになること」と、「自分で自分にかけてしまっている『制限』に気づき、苦手を克服すること」の2点を軸に分析を進めています。
ここでは、自分について知り、『制限』から抜け出すために、「思い込み」というものについて考えていきたいと思います。
ドライバー
ドライバーとは、テイビー・ケーラーという心理学者が提唱した「行動を駆り立てる」メッセージです。
ドライバーという言葉から連想するのは、運転手やねじを回す道具、ゴルフのクラブなどでしょうか。
実は、”ドライブ”という言葉には、運転するといった意味の他に、「走らせる」「駆り立てる」といった意味があります。
つまりこの場合の”ドライバー”というのは、人を”駆り立てるもの”を意味します。
以前紹介した”禁止令”と同じように、ドライバーも幼いころの両親とのかかわりから作られます。
ドライバーは、以下の5種類です。
1.完全であれ
2.喜ばせろ
3.努力せよ
4.強くあれ
5.急げ
これらのドライバーは、親が直接この言葉を子どもに伝えた、ということではありません。
例えば、「しっかり勉強して、良い大学に入るんだよ」と言われたことで、「完全であれ」ドライバーが作られてしまうこともあります。
これらドライバーは、いずれの要素も「持っていてはいけない」ものではありません。
人を喜ばせることや、努力をすることが「してはいけないこと」というわけでは決してないのです。
では何が問題かと言えば、ドライバーはこれらの要素を過剰に強く持ってしまっている状態である、ということです。
「喜ばせろ」ドライバーに強く駆り立てられれば、自分のことは二の次にして人のことを優先してしまうので、精神的に負担がかかってしまうでしょう。
「努力せよ」ドライバーに強く駆り立てられれば、寝る間も惜しんで努力するため、身体を壊してしまうかもしれません。
自分を駆り立てるドライバーに気づくことで、肩の力を抜いて、ほどほどに行動ができるようになるのです。
ドライバーは、「ついついやってしまう習慣」や、「なんとなくこうしないと不安になってしまう行動」などから探していくことができます。
完全であれ
「完全であれ」ドライバーは、「間違えてはいけない」「誤解されてはいけない」といった考えを強く持ちます。
そのため、誰かに何かを伝えるときは、「8時20分に駅から300m先の公園で待ち合わせだよ」といったように、数字などをよく使う傾向があります。
もちろん、これ自体は悪いことではないのですが、間違いのないように確実に伝えないといけない、といった気持ちが強すぎて、うまくいかないことがあります。
例えば、明確に決めたくても事前に確定するのは困難なことがあるとストレスになってしまうかもしれません。
また、他者に対しても同じように完全な情報を求めてしまうと、相手の煮え切らない返事や不明確な情報にイライラしてしまうこともあるでしょう。
時には、多少の齟齬があったとしても対処できると考えて「ほどほど」に行動することも大事かもしれませんよ。
喜ばせろ
「喜ばせろ」ドライバーは、周囲の人を喜ばせたり、相手の考えに合わせることを重視します。
そのため、相手を褒める言葉を多く使ったり、「~~だよね?」というように相手に確認するような話し方を使う傾向があります。
「喜ばせろ」ドライバーの問題点は、自分自身の意志をないがしろにしてしまうことです。
自分とは違う考え方についても、「違うんじゃないかな」と思いながらも同意してしまうため、精神的に疲れてしまいます。
「それは違う!」と口にすればいいというわけではありませんが、「相手第一」に動くだけでなく、相手のことを認めた上で、「自分はこう考えているんだ」という意思表示をしていくことは重要です。
努力せよ
「努力せよ」ドライバーは、とにかく常に全力を出して、自分を追い詰めようとします。
わかりやすいのは、「あの件はどうなりましたか?」と聞かれて、「すぐに終わらせます!」なんて返事をしてしまう、というケースです。
実際には”状況の確認”をされただけであるにも関わらず、「努力が足りない、もっと努力しろ」といったメッセージとして受け取ってしまうのです。
「努力せよ」ドライバーに駆り立てられていると、「疲れている」ことや「余裕がない」ことに安心感を得ます。
自分が限界の状態にあることで、「ちゃんと努力しているぞ」と確認ができて落ち着くのです。
しかし、当然そのような状態が続けば調子を崩してしまうため、かえって何もできない状況になってしまうこともあります。
強くあれ
「強くあれ」ドライバーは、今の自分自身を「ダメなやつだ」「弱者だ」と考えていることから生じます。
このドライバーの特徴は、実際に強くなるために努力をするのではなく、自分の弱さを隠すための行動を起こすことにあります。
例えば、何かうまくいかないことがあったときに、「あいつが悪いんだ」と他者のせいにしたり、「今の自分が生きづらいのは、すべて国の政策が悪いからだ」というように、個人ではどうにもならない大きな相手に原因を求めたりするのは、「強くあれ」ドライバーの影響であると考えられます。
このドライバーに駆り立てられていると、周囲の人から悪い印象を持たれやすくなってしまうため、人間関係で問題が起きてしまうことがあります。
自分自身の弱さを認めることが、このドライバーから抜け出すために必要となるでしょう。
急げ
「急げ」ドライバーは、その名の通りどんなときでも自分や周囲を急がせる傾向があります。
実際には次の予定までに時間の余裕があったとしても、「時間がない」と感じて急いでしまいます。
また、自分が待たされたり、周囲の物事が滞っていると強いストレスを感じます。
このドライバーに駆り立てられていると、どんなときでも余裕がないため心が休まらず、イライラすることも増えてしまいます。
早く終わることは悪いことではないのですが、常に急ぐのではなく、メリハリをつけられるようになれば、ずっと生きやすくなるのではないでしょうか。