社会不安障害ってどんな病気?-⑥
薬物療法に並ぶ、「社会不安障害」の治療法、認知行動療法。
不安が起こりそうな状況で、どんなふうに考え、行動していけばよいか、実際の行動を通じて身に着けていく方法です。
うまくいけば薬物療法以上の効果が期待できます。
認知行動療法の特徴
「社会不安障害」でみられる典型的な行動パターンは、「回避行動」です。
回避行動の背景には、その人なりの考えがありますが、「社会不安障害」悩む人は、その考え方自体にかたよりがあり、「思い込み」ともいうべき状態にあることが少なくありません。
認知行動療法は、回避行動を生む元になっている思い込み、つまり認知のかたよりを修正すると共に、これまで逃げ回っていた状況に立ち向かう方法を学ぶことを目的とした治療法です。
「うまくいかないに違いない」
「自分のみっともないふるまいを見て、他人はバカだと思うだろう」など
「うまくいくわけがないからと、挑戦しない」
「バカにされたくないから、人前に立つことを避ける」など
●行動の元になっている考え方を修正する
●行動そのものを変えるための方法を学ぶ
認知行動療法の手法
不安に苦しむ自分を変えたい。
あなたの心の中には、きっとそんな思いがあるはずです。
でも、「誰か」が変えてくれるわけではありません。
どんな薬も、どんな医師も、どんなカウンセラーも、あなたがどう行動するか、そこから何を感じるかまではコントロールできません。
まず、自分を変えられるのは自分自身しかない、という自覚が必要です。
認知行動療法は、問題行動を生む元になっている思い込みを修正し、そのうえで、新たな行動パターンを獲得することを目的に進められる治療法です。
認知行動療法によって獲得した行動パターンは、新たな「性格」とも言えます。
1.認知の修正
回避行動を生み出す元になっている「考え方のクセ」に注目。
社会的な場面で苦痛を感じる元には、その「思い込み(認知のかたより)」があるのかもしれません。
まずは、そのことに気づくことが大事です。
そして、頭に浮かんでくる思いにとらわれそうになったとき、「ほかの見方はできないか」と、自分で自分に問いかけてみましょう。
どんな事柄も、視点を変えれば別の局面が見えてくるものです。
① 全か無か(オール・オア・ナッシング)
「すべてOK」か「すべてダメ」か、白黒つけたがるところはありませんか?
ひとつでもミスがあったら、「すべて失敗だった」と捉えていませんか?
② たまたまとは思えない
一度、うまくいかなかったと感じると、次も必ずうまくいかないと思いがちではないですか?
③ プラス面の過小評価
うまくいった経験を、「こんなこと、たいしたことではない」などと過小評価しがちではありませんか?
④ マイナス面の過大評価
思い通りにならなかったこと、できなかったことばかり思い詰めていしまう傾向はありませんか?
⑤ 否定的な結論づけ
はっきりした結論をつけるだけの材料がないとき、つねに否定的な結論を導きがちではありませんか?
⑥ 否定的な予測
どうなるか分からない場合でも、「うまくいくわけがない」と否定的な予測をし、必ずそうなると確信していませんか?
⑦ 「~すべき」思考
「私はこうすべきだった」「あの人は、私にこうすべきだった」と考え、自分や他人を批判しがちではありませんか?
⑧ 過剰な自意識
他人の注意がつねに自分に向いているように感じたり、自分のふるまいが他人に不快感を与えるという確信をもったりしていませんか?
●自分の考えに、確たる証拠はあるのか?
●違う見方はできないだろうか?
●おそれている事態が実際に起きたからといって、何か大きな影響があるだろうか?
① 白や黒だけではない、灰色もある
② 状況は変化する。次回はうまくいくかもしれない
③ 他人がどう思うかもしれないが、進歩は進歩
④ うまくいかなかったことだけじゃない。成功もあった
⑤ 否定的なことが起きると決まったわけじゃない
⑥ やってみなければわからない
⑦ 「~すべき」だなんて誰が決めた?
⑧ 人は他人のことにそれほど関心を払っていない
次回は、認知行動療法の「エクスポージャー(暴露)」と、「ソーシャルスキルトレーニング(SST)について詳しくみていきます。