夏の風物詩~大文字で夏がゆく~
京都の夏を彩る一大行事のひとつ、大文字五山送り火
「祇園祭で夏が来て大文字で夏がゆく」
――京都お盆の風物詩「京都五山送り火」
京都府京都市左京区にある大文字山など、
各山で毎年8月16日に必ず行われるかがり火のことです。
かがり火とは、お盆で帰ってきていたご先祖様が無事にあの世へ帰れるようにと
知らせる明かりや案内みたいなもののことを言います。
これを京都では、毎年の伝統行事で、山々に大々的に灯しているのです。
8月16日の夜に送り火が焚かれるのは「大文字」だけでなく、
「妙・法」「舟形」「左大文字」「鳥居形」の五山。
送り火は、東側の「大文字」から逆時計回りに西の「鳥居形」まで5~10分置いて順次点火され、
京都盆地を取り囲む山に火文字が浮かび上がっていきます。
山上に大きく灯された、大迫力(一画80m、二画160m、三画120m)の「大文字」
いったい五山送り火はいつ始まったのか?
なぜ「大」という字になったのか?
…これだけ有名な行事でありながら、
実は五山送り火の起源や由来は謎に包まれているそうです。
送り火のときの文字って
よくよく考えてみればどういう意味なんだろう・・・
意外と知られていない送り火の文字の意味
大文字
大文字については詳しくはわかっていません。
しかしいくつかの諸説があるのでそちらをお伝えいたします。
① 弘法大師説
大文字山が火災になったとき、阿弥陀仏が光明で消し止め、
その光明を真似して火を用いた際の儀式を、
空海が「大」にしたという説。
② 足利義政説
銀閣寺を立てた足利義政は、
自分の子供のこれからに、人生を願う祈りの為、
大文字山に白布を掲げたのを見て、
相国寺の横川景三(僧)が決めたものという説。
③ 魔を撃退説
悪霊を追い払う為に有名だったのが★(ほし)で、
山に★を表すことが難しく、文字として表そうとなり、
★に似た「大」の文字を使用することになった説。
④ 無病息災説
手を広げて寝ている人間に似ている為、
「大」を使用し無病息災を願った説。
妙・法
鎌倉時代にある村人が、法華経を説いたところ、
村の住人たちは喜び、法華宗の題目の妙法華経から、
「妙」の頭字を送り火の文字にしたのだそうです。
ちなみに、妙・法は二つで一つの山です。
理由としては初めは「妙」の山しかなかったのですが、
時代が過ぎるとともに「法」の山が出来て、
二つの山が一つに繋がった状態になったのだそうです。
現在も妙・法はセットで点火もそのようになっています。
船
船にもいくつかの説があります。
どれが本当なのかはこちらも不明です。
① 命の危機から無事に助かったから説
平安時代、唐へ出かけていた円仁は、帰り道に遭難しかけ、
危うく命の危機になるところでした。
無事帰国できたのはそのとき船に乗りながら、
「南無阿弥陀仏」と唱えていたからだそうで、
無事に帰ってくることが出来たので、
そのとき乗っていた船を送り火文字にしたようです。
② 伝染病説
これまた同じ平安時代での説になりますが、ある伝染病が流行り、
手の施しようもなく何万人と死者が出て、その供養の為に、
多くの人を救うという意味の大乗仏教が元となり、
その教えが船の形となり、送り火文字として
使われているのではないかという説。
左大文字
大文字、船同様はっきりとした意味は分かっていません。
「大」が御所から見て左にあるので左文字と呼ばれています。
左が女、右が男を表しているといわれています。
鳥居
伏見稲荷大社の御灯明(おとうみょう)として焚かれたといわれています。
それぞれ諸説はあるようですがはっきりとはわかっていません。
鳥居型の点火と同時に行われる広沢の池の灯篭流しも幻想的ですね。
五山送り火で燃やされるのは護摩木と呼ばれる薪です。
「大文字」は銀閣寺前で、「左大文字」は金閣寺前で護摩木の志納(300円)を受け付けており、
自分なりのメッセージを書いて燃やしてもらうことができます。
五山送り火行事の中心は、京都市でも京都府でもなく各山の保存会の人たちです。
山に設けられた火床の草刈り、薪や護摩木を用意してリフトで山に運び上げるんだそうです。
たとえば、「大文字」一山で燃やすのは約600束もの膨大な割り木。
運び上げるのも大変なら点火作業も非常に危険です。
7月13日または8月13日➡ お盆の時の先祖の霊を迎え入れるための「迎え火」
8月15日または16日➡ お盆に帰ってきた死者の魂を再びあの世へと送り出すための「送り火」
加えて、盆提灯、線香、蝋燭といったお盆の時期に灯す様々な「火」は精霊たちの目印に……
五山送り火は、遠くから見る人にとっては“一瞬で終わる夏の風物詩”です。
「京都五山送り火」は「ただ火を燃やしているのではなく、
亡くなった人たちを供養して先祖を浄土へ送るという」と言う思いで
先祖を偲んで見てみるのもよいのでは・・・・・