リス太と学ぶ認知行動療法 ~感情のメリット・デメリットを分析する~

前回までの「リス太と学ぶ認知行動療法」はこちらから

健全な感情と不健全な感情の違いを見てきたわけだけど、改めて、どうしてこの2つを区別する必要があるんだったかK君はわかるかな?
ええと、不健全な感情であれば認知行動療法を使って歪みを修正したほうがよいけれど、健全な感情はその必要がないから、かな?
そうだね。健全な感情は、それが否定的感情であっても良い選択肢を与えてくれるんだ。
良い選択肢?
例えば、その感情を素直に受け入れられること、礼儀正しく表現できること、その感情に従って、建設的に行動できることなどだよ。
確かに、否定的感情をちゃんと受け入れて、自然に消えていくのであれば、それが一番だもんね。
中には、不健全な怒りや悲しみなどの感情を十年以上も抱え続けてしまったという人がクリニックを訪れることもあるんだ。
でも、考え方を変えて、その感情を健全に受け入れたら、薬や複雑な治療法もなしに自然に解決したそうだよ。
それはすごいね! でも、今抱いているのが健全な感情なのか、不健全な感情なのかって、どうやって判断すればいいのかな?
よし、じゃあ今日は、現実に否定的感情が浮かんできた時の対処の方法について考えていこう!

 

感情のメリット・デメリット分析

現実の世界では、僕たちは交通渋滞に巻き込まれたり、期待に背くような状況が起きたり、いらだたしいことが起きたり色々な状況に直面するよね。
そんな時に浮かんでくるのが、否定的感情だね。
そのとき、自分の感情を受け入れるのか、あるいはそれを変えるのかを判断していかないといけないんだ。
健全な感情か、不健全な感情かを考えるんだね。
そんな時に役立つのが、「感情のメリット・デメリット分析」だよ!
おおー! それはいったいどんなものなの?
例えば、自分の娘が学校をサボって成績や宿題について嘘をついていたことがわかったとしよう
む、それは良くないね。悲しみや怒りの感情が沸いてきそうだ。
じゃあ、この時K君が親としてするべきことは、怒りの感情をあらわにしてお説教することかな? それとも、呼吸を整えて10数え、一回落ち着いたほうがいいかな?
ええっ!? うーん、怒ることによって改めてくれるかもしれないけれど、何か理由があってのことかもしれないし・・・どっちがいいんだろう。
そこで感情のメリット・デメリット分析だ。まずは怒ることのメリットをリストに挙げてみよう。

 

怒りを感じることのメリット 怒りを感じることのデメリット
自分の感情を抑え込まず、発散することができる。 冷静に会話をすることが難しくなる。
怒っている姿を見せることで、娘に反省を促せる可能性がある。 怒っている姿を見せることで、娘が返って反発してしまう可能性がある。
怒りによって言いづらい気持ちを抑えて話すことができる。 言い過ぎてしまい、関係が悪化したり、後悔することになるかもしれない。

 

ええと、こんな感じかな?
そうしたら次は、メリットとデメリットを比較して、評価してみよう。
合計が100になるように、メリットとデメリット、どちらが大きいかを考えて数字を記入するんだ。
わかった。やってみるよ

 

怒りを感じることのメリット 怒りを感じることのデメリット
自分の感情を抑え込まず、発散することができる。 冷静に会話をすることが難しくなる。
怒っている姿を見せることで、娘に反省を促せる可能性がある。 怒っている姿を見せることで、娘が返って反発してしまう可能性がある。
怒りによって言いづらい気持ちを抑えて話すことができる。 言い過ぎてしまい、関係が悪化したり、後悔することになるかもしれない。
40 60

 

うん。できた!
なるほど。それじゃあこの場合、K君にとっては怒りを感じるメリットよりも、デメリットの方が少し多いように感じるってことだね?
うん。そうだね。
それであれば、今回感じている怒りは「不健全な感情」であると考えられるから、変えていくようにしよう。
そっか。自分でメリットが大きいと感じられれば「健全な感情」だけど、そうでなければ「不健全な感情」っていうことになるんだね。
感情のメリット・デメリット分析の要点は、この感情は自分をどのように救ってくれるか、その利点は何か、それはどのように自分を傷つけるのか、どのような否定的結果が予測されるか、などを自問することにあるんだ。
自分にとって健全で適切であると感じればその感情を受け入れればいいし、メリットの方が薄いと感じるなら変えていけばいい。
健全な感情であるかどうかは、それを受け取る人によっても違ってくるんだね。

 
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