リス太と学ぶ認知行動療法 ~自尊感情のメリット・デメリット分析~

前回までの「リス太と学ぶ認知行動療法」はこちらから

さあ、先週言った通り、自尊感情のメリット・デメリット分析をしてみようか!
はーい!
その前に復習だよ! メリット・デメリット分析はどんなことをするんだったかな?
特定の行動や考え方に対して、それをする/持つことのメリットとデメリットを書き出してみて、そのどちらのほうが大きいかを比べてみるんだよね!
バッチリだね! 今回であれば、特定の自尊感情について、その考え方を持つメリットとデメリットを挙げていくことになるよ!

 

自尊感情のメリット・デメリット分析

今回は、「人気があり、人々が自分に好意と尊敬の念を持ってくれれば、私は価値ある人間だ」という自尊感情について考えてみよう。
ふむふむ、これを信じるとすると・・・。

 

あなたの自尊感情の基礎は?
「人気があり、人々が自分に好意と尊敬の念を持ってくれれば、僕は価値のある人間だ」
これを信じることのメリット これを信じることのデメリット
1.他人の尊敬を得るために、僕は一生懸命努力するだろう。 1.誰かが僕を嫌うようなことがあれば、僕は落ち込んでしまうだろう。
2.人々が僕に好意を持ってくれることは気分がいいものだ! 2.すべての人をいつも喜ばせることはできない。
3.僕はみんなと一緒に行動すれば良いから、自分で考えずに済む。 3.僕が考えることまで、他の人が代わって考えてしまう。
4.僕の自尊感情は他の人にコントロールされてしまう。
5.僕は他の人に簡単に操られてしまうだろう。
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できたよ!
デメリットがメリットを上回ったね。
そうしたら、その自尊感情に代わる新しい考え方を探してみようか。
そうだなあ・・・。
「人々に好意や尊敬を持たれるのは喜ばしいことだけど、それによって自分の価値が決まるわけではない。僕の自尊感情は他人にコントロールを委ねるものではないし、自分のことは自分で決めたほうが良い」って感じかな?
うん、いい感じ!

 

自尊感情の例

自尊感情って、他にはどんなものがあるんだろう?
人それぞれ、色々な考え方があるけど・・・せっかくだから、いくつか紹介してみようか。
  • 成功し、価値のある業績を残せれば、私は価値のある人間だ。
  • 親しく愛情のこもった人間関係を保つことができれば、私は価値のある人間だ。
  • 魅力的な自分と良い健康状態を保つことができれば、私は価値のある人間だ。
  • 公平にそして寛大に、倫理観を持って他人と接することができれば、私は価値のある人間だ。
  • 幸せを感じ、自分を好きでいられるなら、私は価値のある人間だ。
  • 懸命に働き能力を出し切ってベストを尽くせば、私は価値のある人間だ。
  • 社会に貢献できれば、私は価値のある人間だ。
  • 才能があり、少なくとも1つの分野で抜きんでていれば、私は価値のある人間だ。
うーん、どの考え方も、悪いものではなさそうなんだけど・・・。
もし、自分に当てはまる自尊感情があれば、メリット・デメリット分析を試してみて!
もちろん、信じるメリットのほうが多いと感じられたなら、その自尊感情を持ち続けることに問題はないよ!

 

恐れている幻想の技法

メリット・デメリット分析によって、僕が持っている自尊感情はあまり有益ではないかも・・・って、思うようにはなったんだけど、それでもやっぱり、現実的で正しい考え方ではあるんじゃないかなって気持ちもあるんだよね。
そんなときは、恐れている幻想の技法をやってみようか。
恐れている幻想の技法・・・って確か、自分の欠点を知り尽くした第三者と対峙したということで実際に対話してみるっていう手法だったよね?
そうそう。それじゃあ試しに、「社会的に成功し、人気のある人は、他の人よりも価値が高い」という自尊感情で試してみようか。
わかったよ。僕は何をすればいい?
今回は、K君に「社会的に成功して人気がある人」を演じてもらおうと思っているんだ。
僕は特別な成功もなければ人気も高くない人として対応するよ。
ええっ!僕にできるかなあ・・・。うーん、でも、なんとかやってみるよ!
それじゃあスタート!
リス太君。この前、僕が表紙を飾った雑誌は見てくれたかな? これは、信じられないほど多くの僕の業績に対する1つの小さな惨事にすぎないんだ。もちろん、仕事上の大きな成功に加えて、僕ってゴージャスで魅力的でしょ? ほとんどの社交の場で、僕は注目の的なんだ。誰もが、僕と一緒のところを人に見られたいと思うからね。それは僕が特別な存在だからなんだよ。
わあ、それはきっと、刺激的な毎日だろうね!
当然だよ。実は僕、自分がなんて偉大な人間かと考えるたびに、絶え間ない陶酔状態に入ってしまうんだ。でもねリス太君。要するに僕が言いたいことは、僕が君よりもずっと優れた人間だということなんだ。君は、僕の信じられないような成功と人気の、ほんのこれっぽっちも味わうことができない、ただの普通の人なんだよ。だから、君が僕に劣る人間ということは理屈から言って当たり前でしょ? 僕たちが一緒にいる時は、いつも僕が君を見下していることを覚えておいて! 君の感情を記事つけたくはないけれど、間違っても君が僕と同等と思わないためにも、真実を知っておかないとね!
よし、そこまでにしようか。
K君・・・熱演だったね!
あ、あはは・・・。僕、こういう考えを持っていたのかも。やってみたら、どんどん感情が表に出てきたよ。
恐れている幻想の技法を使ってみて、どうだった?
正直、非現実的だなって思うようになったよ。
社会的な成功や人気を得ることには憧れるけど、それを持っているからといって、その人に他の人より高い価値があるとは思えないや。
うんうん、そうだよね。
自尊感情を持つことは決して悪いことではないけれど、考え方には自分を苦しめる原因が含まれている場合もあるんだね。

 

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