徹底解説!認知行動療法! ④ ~認知の歪み~

就労移行支援事業所 リスタート では、毎週火曜日にワークショップを認知行動療法講座をやっています。

講座内でも「認知行動療法とは何か」ということについて説明していますが、普段使わない言葉や考え方が多く含まれており、すぐに理解するのは難しいものです。

ここでは、講座の復習も兼ねて、「認知行動療法」というものについて、より詳しく解説していきます!

認知の歪み

前回、気分が変化する原因となる「自動思考」について紹介しました。

実は、つらい気持ちが浮かぶ原因となる自動思考には、特有のパターンがあることがわかっています。

認知行動療法では、このパターンのことを「認知の歪み」と呼んでいます。

物事を認知するときに、見かたに歪みがあると、その物事の悪い側面だけを捉えてしまい、気分が動揺するのです。

今回は、そんな認知の歪みから、代表的なものを10種類紹介していきます。

代表的な認知の歪み

①白黒思考
物事を白か黒かの2つで考えてしまう認知の歪みです。
完璧主義な人などが持っていることが多くあります。
例えば、仕事で1つだけミスをしてしまったとき、他に影響が出ていなくとも、「この仕事は失敗だ」と考えてしまいます。
この認知の歪みがあると、実際にはほぼ起こらない100%の成功以外は成功と認められないため、ネガティブな気持ちになりやすくなります。

②極端な一般化
たった1つのうまくいかなかったことを、他の物事にも当てはめてしまう認知の歪みです。
この認知の歪みがあると、例えば友人に送ったメールが返ってこなかったことで、「自分は誰とも仲良くなんてなれないんだ」と考えてしまいます。
実際には、万が一その友人との関係が上手くいっていなかったとしても、他の人とはまったく関係がないのにです!

③心のフィルター
物事の悪い面にしか目がいかなくなって、あるはずの良いことが見えなくなってしまう認知の歪みです。
例えば、「自分の人生には良いことなんて1つもなかった」というのは、代表的な心のフィルターでしょう。
これは、人生において上手くいかなかったことを抽出して思い返してしまっているのであり、楽しかったこと、安らいだこともあるはずなのです。

④マイナス化思考
心のフィルターが良い面が見えなくなる認知の歪みなら、マイナス化思考は良い面を良いと感じられなくする認知の歪みです。
起きた出来事に、自分でマイナスの解釈を加えてしまいます。
例えば、仕事で成功を納めたにも関わらず、「これは前にしたミスの分を取り戻しただけだ」なんて考えていたとしたら、それはマイナス化思考です。

⑤結論の飛躍
根拠もなしに、他者の考えや未来のことを決めつけてしまう認知の歪みです。
他者のことを決めてしまうことを「心の読みすぎ」、未来のことを決めてしまうことを「先読みの誤り」と呼びます。
例えば、廊下ですれ違った上司に声をかけてもらえなかったとき、「あの人は自分のような使えない部下には声もかけたくないと思っているんだ」なんて考えていたら、結論の飛躍をしています。

⑥過大評価・過小評価
自分の失敗や短所は大きくとらえ、成功や長所は小さくとらえる認知の歪みです。
また、他者についてはこの逆になる傾向があります。
例えば、「この料理、ちょっと味付けが濃いかな?」といわれて、「自分は料理が下手だ」と大きくショックを受けていたとしたら、失敗を過大評価していると言えます。
この認知の歪みを持つと、結果的に自己評価が低くなってしまいます。

⑦情緒的な理由付け
理性ではなく、感情をもとに物事を判断する認知の歪みです。
「こんなに気が滅入っているのがうまくいっていない証拠だ」というような考えですね。
例えば、「自分の手には負えないだろう」と考えている根拠が、実は「不安だから」なんてことがあったりします。

⑧べき思考
「~するべきだ」「~でなければならない」というように、強く思い込んでしまう認知の歪みです。
この基準はあくまで自分で作ったものなのですが、それで自分の行動を制限してしまい、強いプレッシャーを受けてしまいます。
また、他者に対しても同じ基準を当てはめてしまった場合、思い通りにならない相手に怒りを覚えるようになります。
例えば、部下が定時に帰ったことに怒りを覚えたのであれば、「定時であっても、周囲の仕事が終わるまでは残るべきだ」というルールを自分が作っているのが原因と考えられます。

⑨レッテル貼り
②極端な一般化が、さらに強くなったものです。
自分にレッテルを張り付けてしまうことで、あらゆる物事に対してそのレッテルを元に考えるようになってしまいます。
例えば、「自分はダメ人間だ」というレッテルを張ってしまえば、ちょっとしたミスでも「自分はダメ人間だからやっぱりうまくいかないんだ」などととらえ、落ち込んでしまいます。

⑩自己関連付け
自分に関係がない、あるいは薄いことまですべて自分に原因があると考える認知の歪みです。
例えば、子どもが受験に失敗したとき、「私のせいだ。もっと面倒をみてあげればこんなことにはならなかったのに」と考えていたとしたら、それは自己関連付けです。
実際には、受験の合否を決める大部分は本人の努力であり、親が直接的な要因にはならないはずです。

 

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