徹底解説!認知行動療法! ⑥ ~根拠と反証から現実的な考え方を見つける~

就労移行支援事業所 リスタート では、毎週火曜日にワークショップを認知行動療法講座をやっています。

講座内でも「認知行動療法とは何か」ということについて説明していますが、普段使わない言葉や考え方が多く含まれており、すぐに理解するのは難しいものです。

ここでは、講座の復習も兼ねて、「認知行動療法」というものについて、より詳しく解説していきます!

根拠と反証

前回、問題リストと3つのコラムによって問題となっている自動思考を見つけることができました。

次に、この自動思考に”ゆがみ”が含まれていないか検証していきます。

実際に起きている事柄よりも悪くとらえていないかを探るためには、「根拠」と「反証」の書き出しが有効です。

根拠

まずはその自動思考が事実であるといえる根拠を考えてみましょう。

根拠は、自分が「思うこと」ではなく、実際に「起きたこと」のみを書き出すようにしてください。

「あの人がこう思っている」「将来こうなるだろう」というのは、自分の「推測」であって事実ではありません。

「あの人がこう言っていた」「今こうなっている」ということに目を向ける必要があります。

反証

続いて、反証も書き出しましょう。

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、反証とは「事実でないことを証明する証拠」のことです。

自動思考の通りではないと言えそうなことを探してみましょう。

④で紹介した認知の歪みが見つかれば、それも反証に含めることができます。

現実的な考え方

根拠と反証が出てきたら、それらを元に”現実的な”考え方を見つけましょう。

反証が出てきたということは、もともとの自動思考にはいくつかの「思い込み」が含まれており、それによって現実を悪くゆがめて捉えていたことになります。

それらのゆがみを取り除いた、現実的に起きている事実に沿った考えのことを適応的思考と呼びます。

適応的思考を作るためには、根拠の内容と反証の内容を両方受け入れることが重要です。

適応的思考を見つける例

前回見つけたホットな自動思考である、「望まれている結果を出すことができず、上司や同僚に呆れられてしまうだろう」を例に説明していきます。

自動思考
望まれている結果を出すことができず、上司や同僚に呆れられてしまうだろう

根拠
1.結果を出すことができずに、冷たく指摘を受けている先輩を見たことがある。
2.毎年新入社員のうち3割程度はやめていると聞いたことがある。
3.結果を出そうにも、具体的にどうすればいいかわからない。
4.以前にもこのような場面で上手くいかず、やめてしまったことがある。
5.上司や同僚に呆れられてしまったら、それで自分はおしまいだ。

反証
1.まだ実際にやってみたわけでもないのに結果が出ないというのは決めつけだ(結論の飛躍「先読みの誤り」)
2.結果を出せなかった人がいるからと言って、自分もそうなるという根拠はない
3.3割のやめた社員が、みんな結果が出せなかったからやめたのだなどとは誰も言っていない
4.自分でどうすればいいかわからないなら、人に相談してみればいいのではないか
5.確かにこれまでにも不安や緊張で自信を無くすことがあったが、常に失敗してきたわけではない(極端な一般化)
6.たとえうまくいかずに呆れられてしまったとしても、それで人生が終わるわけではない。後から挽回すればよい。(白黒思考)

適応的思考

1.指摘されていた先輩ややめていく新入社員は気がかりだが、実際にやってもいない今、失敗する根拠なんてどこにもないのだからまずはやってみよう。
2.結果の出し方がわからずに苦しんでいるが、誰かに相談したり、やり方を見るなりして対処法を探せばよい。
3.結果が出ずに呆れられてしまう可能性は確かにあるかもしれないが、そうなったらまた来月に挽回しよう。

“ポジティブ”ではなく”現実的”

どうでしょうか。

このように、自動思考に潜むゆがみを見つけることが、現実的な考え方に気づくために必要なのです。

なお、”現実的”と”ポジティブ”は違います。

単に物事の良い側面だけを見るのではなく、実際に起きていない、「こうじゃないか」と悪い予想をしている部分を取り外したものが適応的思考です。

そのためには、根拠と反証の両方に目を向けて、自分自身が受け入れる必要があるのです。

 

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