自分の人生を支配している「思い込み」 ⑩ ~自虐的思い込み~
就労移行支援事業所 リスタート では、毎週金曜日に自己分析講座をやっています。
自己分析講座では、「自分を知り、人に説明できるようになること」と、「自分で自分にかけてしまっている『制限』に気づき、苦手を克服すること」の2点を軸に分析を進めています。
ここでは、自分について知り、『制限』から抜け出すために、「思い込み」というものについて考えていきたいと思います。
自虐的思い込み
今回は、「自虐的思い込み」と呼ばれる思い込みを紹介していきます。
自虐的思い込みは、以下の10種類に分けられます。
・感情の完全主義
・業績の完全主義
・自己認識の完全主義
・認められないことまたは批判の恐怖
・拒絶への恐怖
・孤独への恐怖
・失敗への恐怖
・衝突への恐怖
・否定的感情への恐怖
・全能感
これらの自虐的思い込みは、その人の価値観や考え方の一部として存在します。
これまで紹介してきた思い込みと同じく、これらの思い込みも、持っているからイコール悪い、というわけではありません。
しかしいずれも、大きな問題となり得る部分を含んでいるのです。
それぞれについて詳しく見てみましょう。
感情の完全主義
「私は常に幸福感と自信を持ち、感情をコントロールできなければならない」という考え方です。
実際にうまくいっているときには自分に自信を持つことに繋がるのですが、実際にはどのように生きていても、いつもうまくとはいかないものですよね。
そんなとき、この思い込みを持っていると、「悲しんだり苦しんだりしてはダメだ」と自分の感情を強引にコントロールしようとして失敗し、さらに落ち込んでしまう、と負のループが始まってしまいます。
業績の完全主義
「私は決して失敗したり、ミスを犯してはならない」という考え方です。
ミスをしないように注意することで、クオリティの向上につなげられるのは間違いなく良いことです。
ところが、現実的には、どんなに注意していたとしても、一切ミスを起こさないというのは不可能と言えます。
そのため、いざミスをしてしまったときに過剰に自分を責めたり、他はしっかりできていたとしても、そのミスを元に「失敗した」と捉えてしまったりする危険性があります。
自己認識の完全主義
「人々は、欠点のある脆弱な私を愛することはないし、受け入れてもくれない」という考え方です。
この思い込みは、自己の欠点を改善するための努力に繋がるという点では悪いものではありません。
ところが、どんなに努力しても、人には向き不向きがありますし、あらゆる面において欠点のない人間はいません。
そのため、どれほど努力を重ねても自分の欠点にばかり目が行ってしまい、自身が持てなかったり、無理をしすぎて身体を壊してしまったりすることもあります。
認められないことまたは批判の恐怖
「私が価値のある人間であるためには、みんなに認められることが必要だ」という考え方です。
この思い込みは、自分の価値を「他者の評価」に委ねてしまいます。
もちろん、周りが褒めてくれたりして自分が認められていると感じられれば自信に繋がります。
しかし、果たしてどんなときでも周囲が好意的な評価をしてくれるかというと、残念ながらそうではないでしょう。
考え方が違う人からは否定的な意見をもらうこともありますし、評価を貰い続けるためには、毎日のように新しい価値を生み出さないといけないということにもなります。
そのため、評価してもらえない、認めてもらえないと自分に自信が持てず、辛くなってしまうのです。
拒絶への恐怖
「誰からも愛されないのなら、私の人生は生きるに値しない」という考え方です。
他の人に認められていないと自分の価値を認められない、という点では、先ほどの思い込みとよく似ています。
この思い込みを持っている人は、他の人からの悪感情に敏感で、嫌われないように気を遣います。
それ自体は良いことなのですが、実際には人は一人一人価値観が違うために、誰にでも好かれようとすると必ず無理が出てきてしまいます。
そのため、どんなに気を配っても思った通りの人間関係を築くことができず、疲れ果ててしまうのです。
孤独への恐怖
「1人でいると、みじめで満たされていないと私は感じてしまう」という考え方です。
集団に参加する、というのは、現代社会で生きていく上では重要なことであり、そのための努力も決して悪いものではありません。
ところが、この思い込みがあると、自分が所属しているグループと自分とで意見や価値観の相違があったときに苦しむことになります。
周囲の人から孤立してしまうことへの強い恐怖心があるために、自分を捻じ曲げてでも周囲に合わせようとしてしまうことで、苦しんでしまうことになるのです。
失敗への恐怖
「私の価値は、実績(または知性、地位、魅力)で決まる」という考え方です。
自分自身のこれまで培ってきた実績によって自分の価値を見出すために、成功を積み重ねれば自信を持てますし、そのための努力も怠りません。
ところが、自分の実績に”キズ”ができてしまうと価値を失ってしまうと考えるために、些細な失敗にも敏感になり、自分を追い込んでしまうのです。
衝突への恐怖
「愛する者同士が争ってはならない」という考え方です。
この思い込みを持つ人は、大事にしている周囲の人との衝突を避けようとします。
しかし、「衝突」というのは、本当にいけないことなのでしょうか。
もちろん、お互いに自分の意見を曲げずにぶつかってしまうのであれば、人間関係にヒビが入ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、実際には違う意見を持っているにもかかわらず、それを伝えずに相手の意見をすべて受け入れるのは、健全なコミュニケーションとは言えません。
むしろ、言いたくても言えないことが負担として溜まっていき、小さなきっかけで深刻なすれ違いが発生してしまうこともあるのです。
否定的感情への恐怖
「私は、怒ったり、心配したり、不適格と感じたり、嫉妬を感じたり、脆弱と感じたりしてはならない」という考え方です。
ネガティブな感情を持つことに対して過剰に恐怖心があるため、そういった感情を否定しようとしてしまいます。
ですが、「感情」というものは、直接コントロールできるものではありません。
浮かんでしまった感情を否定しようとしても、思うようにコントロールできず、かえって辛い思いをしてしまうでしょう。
全能感
「人々は、いつも私が期待する通りに振舞わなければならない」という考え方です。
「こんなに偉そうなこと、思っているわけがない」と思うかもしれませんが、この思い込みは自分では気づきづらいものです。
なぜなら、人は自分自身の考えに疑問は持たず、正しいと感じるからです。
自分の考えと他の人の考えが違うとき、ついつい「この人は間違っている」というように感じてしまうのです。
そこをぐっと堪えて、自分の意見は自分の意見、相手の意見は相手の意見として認められるようになれば、人間関係はより良くなっていくはずです。