認知行動療法講座「認知の歪み②」
認知行動療法講座
現在、高田馬場の就労移行支援事業所 リスタートでは、リモートによるプログラムを行っています。
今日は、認知行動療法のプログラムを行いました。
前回は、認知行動療法とはどのようなものかという部分から、気分と自動思考の関係までを復習しました。
今回は、認知行動療法の重要な要素として繰り返しお話している「認知の歪み」について復習していきます。
認知の歪み
前回、ネガティブな感情が浮かぶ原因となる考え方のパターンである”認知の歪み”について、5つを紹介しました。
今日の認知行動療法講座では、その続きとなる5つの認知の歪みについて紹介していきます。
6.過大評価・過小評価
“過大評価”・”過小評価”というこの2つの言葉は、日常の中でも使う機会のある言葉だと思います。
認知の歪みとしての過大評価・過小評価は、日常的な使い方とは少し違うので、わかりづらい面があるかもしれません。
認知の歪みとしての過大評価は、自分自身の「失敗」や「うまくいかなかったこと」が対象となります。
すなわち、自分が起こしてしまった失敗を必要以上に大きなものとして自分を責めたり、うまくいかなかったことを大げさに考えて落ち込んでしまったりするのです。
一方で過小評価は、自分自身の「成功」や「うまくいったこと」が対象となります。
こちらは、せっかく成功したことやうまくいったことが大したことではないように感じられてしまいます。
この認知の歪みを持っていると、ダメだったことばかり印象に残り、うまくいったことについてはまるで起きなかったかのように印象に残らず忘れてしまいます。
一方で、他者に関してはこれが逆転し、成功したことはとても素晴らしい、自分には到底できないことに思われ、一方失敗は取るに足らない小さなものと感じられる傾向があります。
「同僚は素晴らしい仕事をしている。それに比べて自分は大きなミスをしてしまい、役立たずだ」なんて感じたときには、この認知の歪みを疑ったほうが良いかもしれません。
7.情緒的な理由付け
自分の感情に基づいて現実を判断してしまう認知の歪みです。
という説明では、イマイチどういうことかわかりづらいですよね。
言い換えれば、「自分がそう感じているのだから、それが事実だ」と考えてしまう状態のことを指します。
例えば、「この仕事をやり遂げることができないだろう」と感じていたとします。
そう感じた根拠はなんなのでしょうか?
このとき、明確に「これがわからないから」とか、「これができないから」といった根拠が見えているのなら、その問題に対処するという選択ができます。
しかし、根拠らしい根拠がなく、「やり遂げる自信がない」から、やり遂げられないだろうと考えていたとしたらどうでしょうか。
この状態こそが、情緒的な理由付けなのです。
8.べき思考
「こうするべきだ」と考えて自分の行動を制限したり、「ああするべきではなかった」と考えて過去を悔んでしまう認知の歪みです。
また、他者に対してもこの「べき」を押し付けようとして、思い通りにならないことに怒りを感じてしまうこともあります。
重要なのは、この「べき」というのが自分自身で作った”マイルール”であるという点です。
国のルール、会社のルール、学校のルールなど、社会生活を営むためには多くのルールがあります。
しかし、それらのルールと、私たちひとりひとりが持っている「こういうときはこうするべきだ」というルールは別のものなのです。
例えば、「人は人と関わらなければ生きていけない。だから、人に感謝すべきだ」という”ルール”を持っていたとしましょう。
この考え自体は立派なものだと思いますし、正しいルールだと感じる人もいるでしょう。
では、この人が感謝の言葉を言わない人を見たらどうするでしょう。
“ルール違反”だと感じたこの人は怒りの感情が湧いてきますし、もしかしたら「ちゃんと感謝の言葉を言うように」と相手に伝えようとするかもしれません。
また別の例を出しましょう。
「上司足るもの大人らしい行動をするべきだ」と考えている人が、大人らしくない行動をしてしまったとしたら?
きっとその人は、こんな行動をとるべきではなかった、と強く自分を責めることでしょう。
ここで大事なのは、マイルールを「絶対のもの」として捉えずに、「そうしたほうが望ましい」といった、縛り付けない捉え方をすることです。
自分と相手で持つルールは違い、そしてそのルールは絶対に守らなくてはならないものではない、と考えられるようになれば、ぐっと楽になるはずです。
9.レッテル貼り
自分や他人に柔軟性のないネガティブなイメージを創り上げて、そのイメージを固定してしまう認知の歪みです。
一般化のし過ぎの極端な形等と言われることもあります。
「こんなこともできないなんて、私はダメ人間だ」とか、「こんなこともしてくれないなんて、彼は融通が利かない」というイメージですね。
これの問題点は、以降何かあったときにはこのレッテルを前提として物事を捉えるようになってしまう点です。
例えば、自分に「ダメ人間」というレッテルを貼ったのであれば、失敗してしまったときに「やっぱり自分はダメ人間だ」とレッテルに沿って考えます。
そのため、少しの失敗で全体をうまくいかなかったとみなす「白黒思考」や、成功を成功と認めない「マイナス化思考」に繋がってしまいます。
一方、他者に対してレッテルを貼った場合も、実際には相手なりに考えて行動していたにもかかわらず、自分の考えと少し違っただけで「やはり融通が利かない」とネガティブな見方をしてしまうことになるのです。
10.自己関連付け
何か悪いことが起きると、それが自分に関係なくとも自分のせいであると責めてしまう認知の歪みです。
「私が○○していたら、こうはならなかったのに」と考えるのですが、それは本当にあなたにすべての責任があるのでしょうか。
例を出しましょう。
Aさんがレジ打ちのバイトをしているとします。
そこでお客様から、「冷凍野菜の袋に穴が空いているじゃないか」とクレームを受けてしまいました。
それを受けてAさんは、「私が朝冷凍コーナーの前を通ったときに気づいていればこうはならなかった。すべて私のせいだ」と考えます。
いかがでしょうか。
冷凍コーナーの前を通ったと言っても、Aさんは品のチェックなどをしていたわけではありません。
こういった場面もすべて「自分のせいだ」と捉えてしまっていたら、必要以上に落ち込みや不安といった感情を持ってしまうことでしょう。