選択理論の復習④ 上質世界

就労移行支援事業所 リスタート のSSTの中で、「選択理論」という考え方を紹介しています。

今回は、上質世界について説明していきます。

上質世界

前回、選択理論の復習の記事で、人は欲求を満たす、あるいは欲求を満たすことを阻害するものを取り除くために行動すると説明しました。

その欲求というのは「生存」「愛・所属」「力」「自由」「楽しみ」の5つに分類でき、人それぞれ優先度や強弱は異なるものの共通して持っているものです。

そして、これら「基本的欲求」は、その満たし方も人それぞれ違っています。

その満たし方の違いが起きる原因を、選択理論では「上質世界」と呼んでいます。

上質世界とは、生まれてからすぐに作られ始める記憶の世界です。

この中には、自分の5つの基本的欲求のうち、いずれか1つ以上を満たしたものが記録されていきます。

記録されるものは、以下の3つに分類することができます。

・共にいたいと思う人
・手に入れたいと思うものや経験したいと思うこと
・行動の基準となる考え方

例えば、愛・所属の欲求は誰かと一緒にいることや集団に属することへの欲求ですが、その対象は誰でも良いというわけではありません。

この人と一緒にいたいと思った人や、居心地の良いグループなどが上質世界に登録されて、その人らと共に過ごすことによって欲求が満たされることになるのです。

他にも、食事をとることは生存の欲求ですが上質世界にある「自分の好きな食べ物」を優先しようとしますし、スポーツで力の欲求を満たすという場合も、自分が好きなスポーツをやろうとするでしょう。

このように、上質世界はその人の経験と共に内容を増やしていき、それがその人の欲求の満たし方を決めていきます。

同じ出来事や状況を目にしても、人によって解釈が異なる場合、この上質世界が大きな影響を及ぼしています。

例えば、「お化け屋敷に行こう」と誘われたとしたらあなたはどう感じるでしょうか。

怖いものが好きか、苦手かによって反応が変わることは間違いなさそうですよね。

さらには、「誰と一緒に行くのか」や、「どんなジャンルなのか」といった要素でも人それぞれ反応は変わってくるでしょう。

まったく同じ経験を積んできた人間がいない以上、同じ上質世界を持つ人は存在しません。

そのため、ビジネスとプライベートを問わず、日常のあらゆる場面では、「ひとつの事実に対して認識が異なる」という状況が起こります。

こんなとき、私たち人間は、「相手も同じように考えているだろう」そして「自分の考えは正しい」と無意識に考えてしまうものです。

そのために、認識が違うことが明らかになった時には口論になってしまったり、どちらかが譲るものの納得はできていないままモヤモヤとした終わりになってしまったりするのです。

ひとりひとり違う上質世界を持っており、また満たす欲求の優先度も違うのだということを念頭に置いてコミュニケーションをとるようにすれば、相手のことを理解しやすくなります。

意見の衝突は、どちらかが正しい、誤っているというものではなく、同じ事実に対して、違う側面の視点を持っていることから起こるものなのです。

相手の考えに合わせるのでなくとも、その人にとって重要なものがなんなのかを理解するよう努めれば、お互いに納得のいく解決を探すこともできるはずです。

 

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