非定型うつ病ってどんな病気?-③

「非定型うつ病」は、その名の通りうつ病の一種です。

しかし、同じうつ病でもいろいろな種類があり、症状も異なります。

まずは、うつ病の全体像を理解しましょう。

うつ病

米国精神医学会の診断マニュアルでは、症状や効く薬物によって、病のタイプを分類しています。

うつ状態をもつ病には、うつ状態のみを示す「大うつ病」と、気分が高揚する躁うつ状態を伴う「双極性障害」に二分されます。

それぞれ症状は違いますが、共通しているのは、抑うつ気分が基本症状としてあることです。

「非定型うつ病」は、一般的によく知られているうつ病とは、まったく正反対ともいえるほど違う特徴を持っています。

両者の違いをまとめてみました。

うつ病(定型) 非定型うつ病
患者 中年期の男性に多い 若い女性に多い
性格 ・真面目タイプ
・几帳面
・責任感が強い
・マイナス思考
・八方美人
・いい子タイプ
・自己主張しない
・他人の目を気にする
・マイナス思考
気分 ・集中力がなくなりボーっとする
・常に落ち込んでいる
・やる気、興味が失われる
・趣味もできない
・自責の念が強い
・身だしなみが乱れる
・集中力が散漫になる
・好きなこと、都合のいいことがあると明るくなる
・イライラしたり、怒りっぽくなる
・ささいなことでくよくよ悩む
・他罰的になる
不安が強くなりキレる
時間 ・朝から午前中が最も憂うつ
・一日中憂うつな気分
・夕方になると少し良くなる
・朝刊シンドロームとも言う
・夕方から夜にかけて憂うつ
・深夜にひとりで泣いたりする
・夕暮れうつ病とも言う
食欲 ・低下する
・体重が減ることが多い
・過食
・特に甘いものを食べたくなる
・体重が増えることが多い
睡眠 ・睡眠不足
・朝早く目が覚める
・入眠できず夜中に目が覚める
・過眠だが眠りは浅い
・いくら寝ても眠い
・一日10時間以上寝る
その他 ・倦怠感が強い
・体調、気分はずっと低迷した状態
・周囲にも具合が悪いと分かる
・疲労感が強い
・体調、気分の変化が大きく、感情のコントロールができない
・病だと気づかれにくい

パニック障害

「非定型うつ病」の人の多くは、パニック発作を経験しており、パニック発作を経験した人は「非定型うつ病」になりやすいことが分かっています。

パニック発作とは、突然、激しい動悸や息切れ、手足のふるえなどに襲われる発作です。

多くの場合、発作を繰り返すので、また発作が起こったらどうしよう…、という「予期不安」を抱きます。

この強い不安によって、外出や仕事ができないといった日常生活に支障をきたす場合を、「パニック障害」と言います。

パニック障害の人の7~8割は、障害を通じて一度はうつ病になることが分かっています。

このうつ病の大半が、「非定型うつ病」と同じような症状を示します。

うつ病を併発するパニック障害は、パニック発作の頻度が高い上、広場恐怖も強くなりやすく、「非定型うつ病」の症状もより明確になりやすいと言われています。

うつ状態が軽くなるとパニック発作に襲われ、パニック発作が消えたり軽くなると、隠れていたうつ状態が前面に顔を出す。

うつ状態とパニック発作を交互に繰り返しながら経過し、徐々に軽減していきます。

パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害は、感情や対人関係、行動の不安定さが特徴です。

たとえば、さっきまで絶賛していた相手に少しでも理想と違うことがあると、途端に悪口を言うなど、安定した人間関係を築くことができません。

怒りのコントロールも困難で、衝動的に家庭内暴力、過食、リストカットなどに走る場合があります。

こうしたトラブルの根底には、「見捨てられるのでは」という不安があるのも、この障害の特徴です。

境界性パーソナリティ障害のこれらの症状は、「非定型うつ病」の気分反応性や拒絶過敏症とよく似ているため、間違われてしまうこともあります。

中には、「非定型うつ病」とパーソナリティ障害を併発している場合もあり、見極めが困難になっています。

「非定型うつ病」と境界性パーソナリティ障害は、以下のような違いがあります。

「非定型うつ病」の人は…

① 病前はしっかりした良い子で、社会適応していた
② 治療者を操作しようとしない
③ 自分と治療者以外の他者を適切に評価できる

症状が似ている病

季節性うつ病

日照時間が少なくなる秋から冬にかけてうつ状態になる病。
過眠や過食をともなう点は、「非定型うつ病」と似ていますが、2年以上繰り返し、冬になるとうつ状態になる点が大きな違いです。
また、なりやすい性格も、季節性うつ病の人は円満で穏やか、親しみやすい人がほとんどです。
治療法も、気分安定剤の処方や光照射療法など、非定型うつ病とは違うので、きちんとした診断が必要です。

慢性疲労症候群

疲労感がひどく、いくら休んでも睡眠をとっても回復しないのが慢性疲労症候群です。

微熱や咽頭痛、リンパ腺の腫れ、思考力低下、感情不安定、睡眠障害などの症状があります。

原因のひとつにウィルス感染がありますが、それ以外は「非定型うつ病」と見分けがつきにくく、慢性疲労症候群と診断された人の中には、「非定型うつ病」が含まれていることも考えられます。

慢性疲労症候群の特効薬はまだ不明なため、薬物療法などは「非定型うつ病」の治療法と同じであることが多いです。

 

次回は「非定型うつ病」の治療法を解説します。

 

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