非定型うつ病ってどんな病気?-④

「非定型うつ病」では、薬物療法心理療法を組み合わせた治療を行います。

そして、日常生活は「規則正しく」。

つまり、リズムが大切なのです。

薬物療法

「非定型うつ病」の治療は、薬物療法が中心になります。

ベースに不安障害をもつ患者さんが多いため、抗うつ剤と抗不安薬を基本に薬が処方されます。

さらに、眠気や疲労、不安、イライラ、焦り、興奮などさまざまな症状を改善する薬を組み合わせていきます。

現在、日本でよく行われているのは、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)と、他の薬の併用です。

うまく組み合わせることで治療効果が上がります。

心理療法

「非定型うつ病」の人に行われる心理療法の代表的なものは、認知行動療法です。

「非定型うつ病」の人は、もともと感情が過敏で、対人関係に悩みやすく、そのことが病の引き金となって悪化を招く一因になっています。

こうした「非定型うつ病」の人の対人関係の問題や考え方の偏りを改善していく心理療法は、薬物療法と同じくらい効果的です。

薬との併用でさらに効果が期待できます。

認知行動療法とは

考え方の偏りを見つけ、ストレスや人間関係への対処方法を身につける心理療法のひとつ。

「非定型うつ病」の人は、マイナス思考に陥りがちです。

例えば、「あの人に嫌われている」「仕事をクビにさせられる」など、一面的な見方だけで悪い方にとらえて落ち込んだり、十分な根拠もないのに、相手の言葉を曲解して、怒りを爆発させたりします。

このような行動の根底には、偏った考え方のクセがあります。

認知行動療法では、そのクセに気づき、直しながら、不安になったときに気分を変える方法や、うつへの対処法を身につけていきます。

認知行動療法は、医療機関でも受けられますが、セルフ・モニタリングも効果的です。

セルフ・モニタリング一例

月日 落ち込んだこと どう思ったか 別の考え方
11/4
  • アルバイト先でミスをした
  • 社員さんに怒られた
  • 最悪だ
  • 見捨てられて、クビになるかも
  • すぐに謝った点は評価された
  • 1回のミスでクビになどならない
11/20
  • 学校で昼食時にひとりだった
  • 友達から無視されているのか
  • 私の悪口を言っているのかも
  • 嫌われた
  • たまたまみんな忙しかっただけ
  • 先週は楽しくおしゃべりしていた
  • 勘違いかも?

体を動かす

軽い有酸素運動をすると、神経成長ホルモンやセロトニンの分泌が増えることが分かっています。

うつ病は、セロトニンがうまく働かない状態にあるので、運動不足になると、ますますセロトニンの分泌量が減り、うつ状態に傾いていきます。

うつ病への運動の効果はすでに確認されていて、薬物療法だけの人より、薬物療法とエクササイズを組み合わせた人の方が回復が早いという報告もあります。

一日に一度は外出し、日の光を浴びて、適度な運動をすることは、うつ病の人にとって、とても意味があるのです。

運動の効果

体だけでなく、心も元気にする効果があります。

  • 海馬が委縮しない…情動を司る海馬の神経細胞が増える
  • 体重が減る…エネルギーが消費できるので過食による体重増加を改善
  • 脳内物質が増える…前頭葉の血流がよくなり、セロトニン分泌増加
  • 汗をかく爽快感…リラックスとリフレッシュ効果。ストレス解消も

生活リズム

「非定型うつ病」の人は、真夜中に目が覚めたり、甘いものを食べたり、生活のリズムが乱れがち。

生活リズムが乱れると、うつや過眠、疲労、昼夜逆転など、さまざまな問題が起こります。

規則正しい生活を取り戻すには、まず睡眠と覚醒のリズムをつくること。

それをベースに、三度の食事を決められた時間にとるなど、生活のリズムを整えていきます。

職場

「非定型うつ病」では、仕事を続ける方がいい場合があります。

職場に通うことによって、生活リズムができ、仕事中はうつ気分を紛らわすこともできます。

一度休職してしまうと、家に閉じこもり気味になり、職場復帰が難しい場合があるため、多少無理をしても、体が動くなら仕事を続けた方がいい場合もあります。

薬物療法と休養が重要な、従来の定型うつ病とはこの点が大きな違いです。

病気が分かったら、職場の人とよく相談し、職場の人も「病気のせい」だということを理解してください。

本人とよく話し合い、ストレスの少ない職場環境をつくるようにします。

ただし、人間関係がストレスの原因になっている場合は、無理して続けるのはよくありません。

異動を申し出たり、場合によっては転職も検討を。

家族

家族は、患者さんにとって一番身近な存在です。

不安や孤独を感じやすい患者さんには、家族の精神的なサポートがなにより心強いでしょう。

ただし、保護的な態度だけでは、この病気は改善していきません。

ときには少しの励ましが良い結果に繋がることが多くあります。

保護と激励の加減が、本人を回復へと向かわせます。

患者さんにはこんな対応を

  • 病気になったことを責めない
  • 患者さんを非難するのではなく感想を述べる
  • 好ましくない言動を禁止するのではなく、やめるよう頼むか、別の言動を提案する
  • 患者さんを尊重し、大切にしていることを示す
  • 攻撃的なことをされても冷静に
  • 家族の集まりから外さない
  • できることは普通にさせる
  • 言動に対して怒るのではなく、悲しむ
  • 治ると信じて気長に待つ

話しかけ一例

×…いつまで寝てるの。早く起きなさい!
〇…こんなに寝てたら昼夜逆転するんじゃないかと心配だわ

×…またこんなに食べたの?太るでしょ!
〇…こんなに食べずにいられないのを見ると気が気じゃないわ

×…どうしてリストカットなんかしたの!
〇…そんなにつらくて苦しいのね