統合失調症ってどんな病気?-②
統合失調症の症状
統合失調症の症状は大きく、幻覚や妄想などの「陽性症状」、意欲の低下などの「陰性症状」、臨機応変に対応しにくい「認知機能障害」に分けられます。
あるはずのものが現れる陽性反応
幻覚
「統合失調症」では、実際にないものをあたかもそこにあるように感じる「幻覚」が起こります。
その中でも特に現れやすく、患者本人を苦しめるのが幻聴です。
幻聴で聞こえるのは、ほとんどの場合、見知らぬ他人の声です。
外から普通の会話として生々しく聞こえるのが特徴で、その内容は本人への悪口や不快なものが多いようです。
症状が重い時期ほど幻聴がはっきり聞こえ、治療を受けて回復してくると鮮明さが徐々に薄れ、やがて消えていきます。
妄想
現実にはありえないことを、本人は真実だと思い込み、おびえたり、敵意を抱いたりするのが「妄想」です。
本人は真実だと信じているため、周囲の説得にも耳を貸しません。
妄想は自分に関するものが多く、大きく4つに分けられます。
- 自分を過少評価する「微小妄想」
- 自分ではないものが体の中にいる「身体妄想」
- 他人から攻撃されていると思い込む「被害妄想」
- 自分の価値を過大評価する「誇大妄想」
感情表現が乏しくなる陰性反応
発症直後は、精神活動が過剰になってさまざまな症状が現れます。
しかし、精神エネルギーが不足してくると、今度は精神活動が極端に低下します。
陰性反応とは、その名のイメージ通り、「うつうつとした状態」になることで、感情の動きが鈍くなったり、意識が低下したりします。
他の症状と比べて目立たないため、周囲の人には症状に見えず、「やる気問題」「努力が足りない」などと誤解されがちです。
しかし、陰性反応は病気が慢性化してから現れやすく、引きこもりにつながりやすい傾向にあります。
症状に気づき、対応する姿勢が、本人や周囲に人にも欠かせません。
日常生活を送ることが困難になる認知機能障害
認知機能とは、記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの知的な能力を指します。
統合失調症では、これらの認知機能の障害がみられ、生活・社会活動全般に支障をきたします。
思考面では、考えが途切れ途切れになってまとまらなくなり、言うことや行動に一貫性がなくなります。
また、ひとりでに考えがわきあがってコントロールできなくなるため、考えをまとめるのがさらに難しくなります。
周囲の人は、患者さん本人が言っていることがわからない一方、患者さん本人は相手に理解されないつらさを抱えがちです。
思考に関する障害は、以下のようなものがあります。
- 誰かに命令されているように感じる「させられ思考」
- 思考のスピードが落ちる「思考制止」
- 急に思考が止まる「思考途絶」
- 思考のスピードが落ちる「思考制止」
- 話が逸脱する「観念奔逸」
- 一つの考えにとらわれる「支配観念」
- 話がまとまらず、一貫性がない「支離滅裂」
その他の症状
発症してすぐは、本人の頭の中が過敏になっていて、ちょっとした刺激にもオーバーに反応したりします。
激しく興奮したり、攻撃的になったり、すべてのことに無反応になったりする(無言症)ことが急に生じることがあります。
これを「緊張病性症状」といい、落ち着きなくソワソワするなどの軽い症状から、足を踏みならすなど激しいものまでさまざまです。
このような、まとまりのない行動は、他にもいくつかあります。
- 意味もなく同じことを繰り返す「常同症」
- 他の人のまねをする「反響症状」
- 同じ姿勢で固まる「カタレプシー」
- 意指示を聞かない「拒絶症」
発症の原因
かつての「統合失調症」は、性格の異常などとの誤解や偏見が持たれていましたが、現在では、脳になんらかの誤作動が起こっていることが分かってきています。
可能性として考えられているのが、神経伝達物質である「ドーパミン」です。
感情、注意、意欲などにかかわりが強い「ドーパミン」が過剰に出すぎているため、異常な興奮や緊張が起こるのではないかと考えられています。
ただ、どのような誤作動が、なぜ起こっているのかは、今も研究が行われているところです。
また、発症には、本人の体質や環境、ストレスなど、さまざまな要因がかかわっています。
これらの原因が組み合わさったうえで、脳のバランスが乱れると考えられています。
次回は、「統合失調症」やそれに連続する障害や病気(統合失調症スペクトラム)という考え方を紹介します。