統合失調症ってどんな病気?-④

「統合失調症」をはじめとする統合失調症スペクトラムに含まれる病気は、なんらかのストレスや葛藤があって発症する場合がほとんどです。

そのため、治療で症状が改善されても、発症の原因が解消されていないと、再び発症・悪化する危険性が残ります。

回復には、「元に戻る」ことにこだわるのではなく、「再発リスクを避け、よりよい環境を目指す」という考え方が欠かせません。

本人も周囲の人も、焦って「元に戻す」ことを目指すのではなく、病気と向き合う中で、新しい生活スタイルや将来の展望などを少しずつ描いていくことを目標にしましょう。

「統合失調症」の治療法

「統合失調症」の治療は、妄想や幻覚などの症状を抑える「薬物療法」、本人の気持ちに寄り添って精神面をサポートする「精神療法」、社会的な生きにくさをやわらげる「精神科リハビリテーション」の3つが柱となります。

いずれも、「これができたらおしまい」というわけではなく、症状の程度や本人の状況などを見ながら継続します。

薬物療法

「統合失調症」における、薬物療法は、主に、幻覚や妄想など症状を抑える働きがある「坑精神病薬」を使います。

統合失調症スペクトラムで起こる症状の原因のひとつは、脳の中で情報伝達を担う神経伝達物質の一種、ドーパミンが過剰になることとされています。

抗精神病薬は、ドーパミンによる情報伝達を抑え、症状を改善させるよう働きます。

また、急性期の激しい症状を抑えるだけでなく、回復期まで長く飲み続けることで、よい状態をキープするように働きます。

ドーパミンとは…
感情や意欲、注意力、集中力といった心の働き、体の運動調節など、さまざまな働きを担う神経伝達物質

薬の種類

抗精神病薬には、以前から使われていた「定型抗精神病薬」と、その後開発された「第二世代」と言われる「非定型抗精神病薬」の2つのタイプがあります。

「定型抗精神病薬」は、ドーパミンの働きを防ぎ、陽性症状を抑える効果がありますが、働きが強い分、副作用が出やすいという問題点が+あります。

「非定型抗精神病薬」は、陽性症状を抑える効果とともに、陰性症状にも改善効果があります。

また、副作用がより軽くなるよう工夫されています。

現在は、「非定型抗精神病薬」を使うのが主流となっています。

3つのタイプの「非定型抗精神病薬」
SDA MARTA DSS(DPA)
セロトニン・ドーパミン遮断薬 多元受容体作用抗精神病薬 ドーパミン部分作動薬
神経伝達物質であるドーパミンとセロトニンの働きをブロックします。セロトニンをブロックすることで、必要な分のドーパミンの働きを高め、陰性症状を改善させます。 セロトニン、ドーパミンに限らず、多くの神経伝達物質の働きをブロックします。SDAと同じように、陰性症状にも効果を発揮します。 ドーパミンが過剰なときに抑えるように働き、ドーパミンが不足しているところには放出を促すよう作用します。ドーパミンのバランスを整えて、陽性症状・陰性症状を改善させます。

 

薬の副作用

抗精神病薬は、作用が強い一方、さまざまな副作用が起こります。

非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬より副作用が軽いとはいえ、ゼロというわけではありません。

気になる副作用が起こった時は、自己判断はせず、早めに医師に相談し、薬の種類を見直すか、副作用を軽くする薬を併用するなどの対応をとりましょう。

精神療法

最近、一般の人にも「心の病気は脳の誤作動で起こる」という理解が広がっていますが、すべてが「心イコール脳」という考え方で説明できるわけではありません。

脳が心の働きに関わっていることは間違いありませんが、心の働きは、今までの経験、環境、周囲の人との関わりなどの影響を大きく受けています。

「脳」ではなく、「心」を治す「精神療法」は、薬物療法と並んで欠かせません。

支持的精神療法

その名の通り「患者さんの気持ちを支えるように接する精神療法」のこと。

本人の話をよく聞いて受け止め、共感したり理解しようと接することで、不安を解消したり、気持ちを楽に、前向きになるよう支えます。

本人と治療者との間に信頼関係がないと成立しない治療法ですが、話をよく聞くこと自体が信頼関係を築くという面もあります。

そのため、支持的精神療法は診察の初期から始まり、治療期間を通して続いていきます。

分析的精神療法

患者さんの話を聞いて、事実を客観的に「分析」し、問題解決の糸口を探っていく診療・治療法のこと。

患者さんのこれまでの生活や人間関係だけでなく、本人の性格、学校や職場などの環境などにも焦点を当てて話を聞きます。

病気の原因となっている可能性のある物事を医師が指摘し、患者さん本人が解決策を考えます。

医師はそれを支え、行き詰ったときや不適切な対策になりそうなときも、否定ではなく「このような視点もある」というアドバイスがされます。

精神科リハビリテーション

回復する途中で、脳の機能障害や陰性症状によるつらさが大きくなる時期があります。

これを解消するために行われる「精神科リハビリテーション」は、脳を活性化させ、生活の中でできることを増やしていきます。

生きづらさを解消する、あるいは症状が残っていても、生きやすくするためのスキルを身につけることを目指します。

リハビリは、医療機関で専門家と行うもの、家庭や生活の中で実践していくものなどさまざまな方法があります。

精神科リハビリの目標

  • 人とのコミュニケーション能力を高める
  • 居場所をみつける
  • 役割を見つける
  • 病気とともに生きる方法を学ぶ
  • 復職、復学の準備をする
  • 生活リズムを整える
  • 考え方の偏りをなくす
  • 作業を通じて心を安定させる
  • コミュニケーションの仕方を学ぶ

 
次回は、その他の治療方法と、患者さんの家族にできること、を解説します。

 

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