社会不安障害ってどんな病気?-④
「社会不安障害になったのは、親のせい」
「あのとき、自分をバカにしたように笑った〇〇さんのせい」
などと、あれこれ思い詰めている人もいるかもしれません。
しかし、発症の原因は、そう簡単なものではなさそうです。
目次
「社会不安障害」発症の原因
「社会不安障害」の発症への影響は、遺伝的な要因、育ち方や社会的な場面での経験など、様々な要因が考えられます。
不安を感じやすい体質(遺伝的なもの)
なんらかの遺伝的要素が、発症のしやすさにつながっていると考えられます。
健康な人の場合、身近な血縁者(両親、きょうだい、子ども)が「社会不安障害」を発症する確率は5%ですが、全般性社会不安障害患者の場合、16%にアップすると報告されています。
また、双子の場合、二人とも患者である確率は、二卵性より一卵性の方が高いという報告もあります。
育ち方などの環境
過保護な育ち方をした人、逆に厳しく育てられ、励まされたり、ほめられた経験が少ない人などに多いといわれています。
ストレス状況での身の処し方を学ぶ機会や、そうした状況下で「うまくいった」という実感を得る機会がすくなかったことが関係しているのではないかと考えられています。
いやな経験
「とても恥ずかしい思いをした」「屈辱的な扱いを受けた」など、いやな経験が発症のきっかけになったという人が少なからずいます。
いやな経験でも、「なんとか切り抜けた」と思えれば、その経験を生かして対処していけるようになります。
しかし、いやな経験の「いや」の部分ばかり強調して考え込んでしまうと、似たような状況には二度と直面したくないと思い始めます。
おそれている状況を回避し続けることで、「なんとかなるものだ」という経験を得ることができず、不安や恐怖はいっこうに解消されないばかりか、増大していくばかりになります。
また、発症のきっかけが特に思い当たらないという人も中にはいます。
発症の原因探しに終始しているだけでは、「社会不安障害」の改善ははかれません。
発症の原因を「これ」と特定することは難しく、仮に特定できたとしても、遺伝的な体質や育ってきた環境などは、変えようがないことだからです。
関連する病気
「社会不安障害」という病気が注目されるようになった理由のひとつに、ほかの心の病気との合併率の高さがあります。
「性格だからしかたない」と治療をあきらめているうちに、アルコール依存症や、うつ病に発展してしまう可能性が少なからずあります。
そうした事態を防ぐためにも、早めの対処が望ましく、重症化を防ぐ可能性が高まります。
併発しやすい心の病気
アメリカの研究では、社会不安障害患者のほぼ半数に、ほかの心の病気が併発していると報告されています。
うつ病(不安うつ病)
「社会不安障害」と合併するうつ病は、不安うつ病と言われ、従来のうつ病とは少しタイプが違います。
以下の項目をチェック
① 強く落ち込むが、よいことがあれば気分が明るくなる
② 食欲増進、体重増加
③ いくら寝ても眠い、過眠
④ 手足が鉛のように重い
⑤ 他人の顔色を強くうかがい、対人関係に過敏
⑥ 夕方から夜にかけて気分が悪い
① が当てはまり、②~⑥に2つ以上当てはまる
→ 不安うつ病の可能性が高い
アルコール依存症(依存・乱用)
「社会不安障害」は、ほかの心の病気に比べて、アルコール依存症の併発が2倍以上ともいわれています。
不安をやわらげるための飲酒が常習化し、飲酒が原因で問題を起こすようになってしまうおそれが高いのです。
パニック障害
パニック障害の症状は、予期せぬ状況で不意に起こるのが特徴です。
しかし、やがて不安が高まる状況のみ発作を起こすようになったり、人前で発作を起こすことをおそれて、社会的状況を回避するようになったりと、「社会不安障害」と区別しにくい状態になることがあります。
【社会不安障害とここが違う】
●症状の出現は突然で、予期できない
●命の危険を感じるような発作を繰り返す
●一人でいるときにも発作が起きる
回避性人格障害
強い劣等感をもち、批判、非難、拒絶をおそれるため、あらゆる社会的状況を回避しようとする。
このような状態にある場合には、「回避性人格障害」と診断されることがあります。
全般性社会不安障害が重度になると、両者はほとんど区別ができません。
別の病気というより、「社会不安障害」の重症例ととらえたほうがよいと考えられるようになっています。
「社会不安障害」との併発が考えられる病気には、摂食障害などの心の病気があります。
いずれにせよ、強い社会不安が治療の妨げになっていることもあります。
併発がみられる場合、薬物療法を中心に、不安に立ち向かうための認知行動療法なども取り入れながら、治療を進めていくことになります。
次回は、「社会不安障害」の薬物療法を解説します。