強迫性障害ってどんな病気?-①

「外出してしばらくしてから、玄関の鍵をかけたかどうか少し不安になる」

「トイレを使うとき、トイレの汚れがちょっと気になる」

このような体験は、だれにでも覚えがあると思います。

しかし、次のように不安が高じてエスカレートしてしまう場合があります。

●鍵をかけたかどうか気になり、何度も確認しないと気がすまず、家を出るまでに長い時間がかかってしまう。いったん家を出てから戻って確かめことも少なくないので、約束の時間に間に合わず、遅刻しがち

●トイレの便座に腰をかけられず、中腰で用をたして、服やズボンがトイレの壁や床に触れないよう細心の注意を払う。トイレから出たあとは、時間をかけて何回も手洗いを繰り返す

かなり深刻なことになっていますね。

本人も「気にしすぎ」と頭ではわかっているのに、行動パターンを変えられず、生活に支障をきたします。

こうなると「強迫性障害」という病気の疑いが出てきます。

■理解度チェック■

「強迫性障害」という病気について、誤解していることはありませんか?

次の8つの項目に、○か×で答えてみてください。

「強迫性障害」はまれな病気 ×
「強迫性障害」は大人がかかる病気 ×
大きなストレスがかかると「強迫性障害」になることがある ×
「強迫性障害」がこじれると、うつ病を併発することがある ×
「強迫性障害」はクセのようなもので、そのうちよくなる ×
薬で極端な行動を止めることができる ×
精神療法(カウンセリング)は、あまり役に立たない ×
おかしなことに気づいた時点で、早めに相談する ×

■正解と解説■

× けっしてまれな病気ではない
「強迫性障害」は約2%の人がかかる、よくみれらる病気。男女差はほとんどなく、男性も女性も同じようにかかることがある
× 大人も子どももかかる病気
「強迫性障害」の平均発症年齢は20歳くらい。1割の人が、10歳ごろまでに発症しており、子どもがかかることも少なくない
ストレスが引き金になることが少なくない
就職や妊娠などのストレスをきっかけに、不安が増し、発症することがある。ストレス次第ではだれにでも起こりうる病気
特にうつ病になりやすい
症状のために、やりたいことや、やるべきことができなくなり、気分が沈んでしまう。一生の間に半数以上の人がうつ病になる
× 放っておくと次第に悪化する
他人からは少し奇妙なクセくらいにしか見えないこともあるが、いつの間にか症状がエスカレートしやすい
× 症状をやわらげる薬がある
薬を使うと、不安がやわらぎ、強迫行動がおさまる。よく使われるのは副作用が少なく、使いやすい「SSRI」という薬
× 有効な治療法
精神療法の一種である認知行動療法が、大きな治療効果をあげることが明らかになっている
× 生活に支障が出たら早めに相談する
体の病気と同じで、心の病気も早期発見、早期治療が基本。変だと思った時点で、早めに相談しよう

「強迫性障害」は、100人に2人くらいの人がかかる、よく見られる心の病気(不安障害、神経症)のひとつです。

早めに病気だと気づいて治療を受ければよくなりますが、実際は次のように困った事態になりがちです。

●治療が必要だと気づくまでに何年もかかってしまい、病気がこじれてしまう

●強迫症状で苦しんで生活に支障をきたす中、ストレスがたまってうつ病などの他の病気が出てくることがある

●本人の病状に巻き込まれてしまい、家族の生活にも深刻な影響が出やすい

「強迫性障害」の当事者と、ご家族に、病気・治療に関する正しい知識を身につけていただくと、治療がスムースに進みやすくなります。


次回は、「強迫性障害」にみられる強迫症状について詳しくみていきます。

 

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