強迫性障害ってどんな病気?-④
前回の「強迫性障害」の患者さんとその家族との関わり、関連する病気はこちら
誰でも、ふと不安になることはあります。
しかし、大抵はしばらくすると忘れることができるもの。
「強迫性障害」になると、不安にとらわれ、不安を振り払う行為をせざるをえなくなり、生活に支障をきたすようになります。
どうしてそうなってしまうのか。
研究が進むにつれ、詳しくわかってきました。
「強迫性障害」の特徴
ふと思い浮かんだ考えが、気になってたまらなくなる経験をもつ人は多いもの。
そうした考えを捨て置けなくなり、こだわりが増していくことが、「強迫性障害」の入口です。
そういう意味では、「強迫性障害」はこだわりの病気とも言えます。
自分でも「考えすぎ」「やりすぎ」という自覚があるにもかかわらず、考え方を変えたり、行動をやめることができません。
大きく分けて2つのタイプがある
「強迫性障害」は、自分ひとりで強迫症状を繰り返す『自己完結型』と、周りの人を加担させようとする『巻き込み型』の2つのタイプに大別されます。
周囲の負担がとりわけ大きいのが、「巻き込み型」です。
患者さんの求めに応じて、家族など周りの人が行動しても、本人の不安は一時的にしか解消されず、長い目でみると、症状が悪化してしまいます。
本人のエスカレートしていく要求にふりまわされ、周囲は疲れ切ってしまいます。
疲弊した家族とのやりとりで、患者さんの状態がますます不安定になることもあります。
やり方の決まった、長時間におよぶ手洗いなど、型にはまった行動をとる
ほかの人に「心配ない」という保証を求める
不快感を減らし、悪いことが起こらないようにするための、意図的な行動をとる
強迫観念が出てくるような状況は刺激を避ける
自分で不安を抱え込む「自己完結型」 ひとりで強迫行為を繰り返すタイプ |
不安を他者にぶつける「巻き込み型」 不安解消を手伝ってくれる人を求めるタイプ |
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相手への要求がさらにエスカレートして、さらなる症状の悪化につながる。相手が疲れ切ってしまい、人間関係が悪くなることがある
原因
長い間、「強迫性障害」は心理・社会的な要因で起こる病気(不安障害、神経症)と考えられてきましたが、最近は、背景に脳の機能障害があることがわかってきました。
1980年台に入り、薬物療法の効果がわかってくると、セロトニンという神経伝達物質が「強迫性障害」の病態と関わりが深いことが判明しています。
また、ものとごとのとらえ方や考え方のクセ(「認知行動面の特徴」)、病前性格の特徴、対人関係や生活上のストレス(「そのほかの要因」)など、単一の見方ではなく、トータルに病気をみるのが現在の理解になっています。
性格
「強迫性障害」を発症する人は、性格に一定の傾向があるといわれています。
以下に示す6つの特徴は、「強迫性障害」の認知行動的研究を通して、提案・検証されているものです。
- 完全主義
なにごとにも完璧を求める - 脅威の過大評価
小さな心配を重大に受け止める - 責任の過大評価
必要以上に自分の責任を感じる - あいまいさへの不耐性
あいまいなことには耐えられない - 思考の意味の過大評価
悪いことを考えていると本当にそうなる確率が高くなると思う - 思考のコントロールへのこだわり
自分の考えや感情をつねにコントロールしたがる
上記の性格特徴がみられる人が、必ず「強迫性障害」を発症するわけではありません。
受験・進学・就職・結婚・妊娠・出産・育児など、人生の転機がきっかけになることが比較的多いとも言われています。
「強迫性障害」のこだわりを、「性格だからしかたがない」と片付けるのではなく、どうしたら苦痛を減らしていけるか、手立てを考えていくことが大切です。
次回は、「強迫性障害」の受診、診断などを詳しくみていきます。