強迫性障害ってどんな病気?-⑦

前回の「強迫性障害」の薬物治療、認知行動療法の詳細はこちら

認知行動療法には、いろいろな方法がありますが、不安な状況に慣れるために有効な「曝露反応妨害法」とよばれる方法があります。

受けた人の7割以上に症状の改善がみられる効果の高い治療法です。

曝露反応妨害法

不安な状態に自分をさらしたまま(曝露)、不安を小さくする行為をしないように我慢する(反応妨害)。

強迫行為をおこなわなくても不安が軽減していくことを体感できる認知行動療法の一種です。

強迫行為をしないで不安をやり過ごせるようになるため、あえて不安の対象に接して強迫行為を我慢する練習を重ねます。

なんとかできそうなことからはじめ、徐々に難しい対象にグレードをあげていきます。

「トリガー」を特定する
強迫観念を引き起こしたり、強迫行為を繰り返したい衝動をかきたてたりする刺激をトリガーと呼ぶ。不安階層表の作成などを通じて、なにがトリガーになっているかを特定する
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トリガーに長時間接し続ける
あえて不安をかきたてるものや、状況(トリガー)に接し、不安を小さくするための強迫行為をしないように過ごす
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強迫行為をしなくても不安が小さくなる
時間の経過と不安の程度の変化を記録する。強迫行為をしないで我慢してトリガーに接し続けると、不安の程度や強迫行為を繰り返したいという衝動が減少していく
事前に知っておきたいこと

曝露反応妨害法をうまく進めるためのポイントがいくつかあります。

これらを事前に知っておくことで、スムーズに治療に入っていけます。

  • できることから始める
  • 家族の協力が不可欠
  • ある程度の苦痛があるが、徐々に弱まることを知っておく
  • 治療のルールを決めておく

森田療法

森田療法は、日本の精神医学者・森田正馬が創始、確率した日本生まれの精神療法です。

だれにでも不安はあって当然という考えが森田療法の根底にあります。

あって当然の不安を否定したり、なんとかして逃れようとするのではなく、不快な感情をありのままに認め、受け入れる。

つまり、「あるがまま」の自分を受け入れることが重要視されます。

治療を通して、「あるがまま」が「自己をいかす」ために大切であることを体感していきます。

臥辱安静期」「軽作業期」「重作業期」「日常生活訓練期」という4期からなる入院治療を行うのが基本のスタイル。近年は、外来治療もさかんになってきています。

「60点主義」をめざす
完璧な状態を求めれば求めるほど、「100点でなければ0点と同じ」という思考に陥って、身動きが取れなくなってしまう。「60点でもよし」とする「60点主義」で、とらわれから抜け出す
不安を受け入れる
不安を完全になくそうとするのではなく、「多少の不安はあるもの」として受け入れるうちに、自然に不安は気にならなくなる

家族療法

「強迫性障害」は、家族にも大きな影響を与えます。

家族の動揺や不安、疲労が患者さんを揺さぶって不安を強め、症状が悪化する悪循環も少なからずみられます。

家族療法は、家族関係を見直すことで、こうした悪循環を断ち切り、よりよい関係をつくることをめざす精神療法です。

治療の目的は、関係性の改善であり、家族のだれかに責めを負わせようとするものではありません。

関係性の視点から考える
問題になる症状や行動は家族との関わりのなかで起こることが多く、個人の問題だけではない。視点を変えると、関係性の問題と捉えることもできる
関係性に働きかける
症状を悪化させるような、親子関係または夫婦関係を見直し、変えていくことで、症状の改善をはかる

家族合同の面接と、患者さん個人の面接を並行しておこなうこともあります。

治験者のアドバイスを受けながら、家族どうしの理解を深め、家族全員が生活しやす
くなる工夫をしています。

●家庭環境を整える
●それぞれがかかえている悩みを解決する
●家族ができる支援について話し合う
●強迫性障害についての理解を深める
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家族のよりよい相互関係が生まれる

次回は、「強迫性障害」からの回復に向けて本人ができること、を解説していきます。

 

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