自閉症スペクトラム(ASD)ってどんな病気?-⑧

前回の「発達の見通しを立てた支援」、「生活環境を調整する支援」の詳細はこちら

「自閉症スペクトラム」への専門的な対応として、療育(治療教育)という手法があります。

療育には様々な種類があり、子どもによって役立つものは異なります。

支援③ 療育法は役立つものならなんでも取り入れる

発達障害の子どもに、治療的・教育的に体系立てられた手法で対応していくことを、大きくまとめて「療育(治療教育)」と呼びます。

療育法には「自閉症スペクトラム」を対象にしたもの、感覚面へ対応したものなど、豊富にあります。

我が子に役立ちそうなものがあれば、取り入れていきましょう。

療育は、特訓ではありません。家族で悩まず、苦しまずに取り組めるものを探していきます。

療育の始め方

始め方は?

医師や支援者などの専門家に相談し、子どもに合った療育法と、受けられる専門機関を紹介してもらう。

選び方は?

療育に正解や間違いはありません。一般論や他の子の例にとらわれず、我が子に合ったものを探します。

目標は?

知的能力などの指標の改善を目指すのではなく、生活上の困難を減らすことを目指します。

主な療育法

RDI
対人関係発達指導法。他者との経験を共有するための能力や意欲の発達を目指す。
ABA
応用行動分析。子どもの行動を分析し、問題点を探りだして計画的に修正していく手法。
SST
ソーシャルスキルトレーニング、社会技能訓練。専門家の指導のもと、集団行動の練習をする。
学習支援
学習面で発達の遅れがみられる子に対して、その子に合った支援を行う。
感覚統合
感覚面・運動面の問題に取り組む療育法。特殊な遊具などを使い、様々な経験を積む。
ソーシャルストーリー
社会的なやりとりをストーリー仕立てで理解する療育法。
TEACCH(ティーチ)
「自閉症スペクトラム」の子の療育法。特徴を修正することなく、生活に適応できるよう支援していくことが理念になっている。視覚的情報の活用や空間、時間、手順などの構造化(※)などが行われる。(※曖昧なものごとを整理し、枠組みをつくること)
ペアレントトレーニング
親がトレーニングを受け、子どもとの暮らし方を学ぶ方法。
PECS(ぺクス)
絵に描かれたカードを活用し、コミュニケーション能力を育てる方法。

支援④ 学校、職場、地域の支援制度を利用する

「自閉症スペクトラム」がある子は、様々な支援制度を利用することができます。

就学から就労まで、それぞれの年代で制度が用意されているので、積極的に利用しましょう。

学校

特別支援教育
学校に、子どもの特性に合った個別の支援や指導をしてもらうこと。いくつかの形式があり、発達障害の程度に合わせて選ぶ。幼児期にASDが分かった場合、就学前から制度の利用を検討できる。
●相談先…通学先の学校、教育センター、特別支援教育センター、教育委員会など

特別支援学校
発達障害だけでなく、各種の障害がある子どもに対して、学習面・生活面などの総合的な支援をおこなう学校。小~高校まで利用可能。
特別支援学級
一般校に設置されている個別支援のための少人数クラス。教科学習や学校生活への支援が中心。小・中学校で利用可能。
通級指導教室
一般校の通常学級に在籍する子どもが定期的に通う少人数クラス。通常学級の一斉指導では学びにくいことを補助的に学ぶ。

職場

障害者就労
生活上の支障があり、障害者手帳を取得した場合、企業の障害者雇用枠に応募することが可能。一般就労より賃金は低いが、障害への配慮や支援を受けやすい。
●相談先…障害者職業センター、障害者就労・生活支援センター、ハローワークなど
就労支援
就労中の人は一般就労を目指す人は、職場適応を支援する「ジョブコーチ」や就労を前提とした試用的な「トライアル雇用」などの制度が利用できる。
●相談先…自治体の福祉担当窓口、障害者職業センター、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所など

地域

就労支援
各種の障害に対する、行政的な認定を示す手帳。障害があることを自治体などに申請し、認定されれば交付される。手帳を取得すると様々な援助措置が受けられる。
●相談先…自治体の福祉担当窓口、児童相談所、医療機関の精神保健福祉士
グループホーム
発達障害などの障害がある人が、共同生活をする施設。15歳以上の人が利用できる。利用期間などの詳細は施設ごとに異なる。
●相談先…自治体の福祉担当窓口
障害基礎年金
知的障害などの障害がある人に給付される年金。20歳以上の人が申請できる。基準は障害者手帳とは異なる。
●相談先…自治体の福祉担当窓口

複数の機関と繋がっておく
「自閉症スペクトラム」の子を支援していく時は、主治医のいる医療機関だけでなく。教育・就労関係の機関も利用した方がよいでしょう。
主治医に教育や就労の悩みを相談することもできますが、医師はやはり医学の専門家。対応には限界があります。複数の機関を利用し、その情報を主治医に報告、相談すると支援がうまくまとまります。


次回は、「生活面で身につけたいスキル」を詳しくみていきます。

 

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