認知行動療法講座「小さい頃に作られるスキーマ」

認知行動療法講座

前回は、スキーマを見つける他の方法として、JIBT-R質問用紙について紹介しました。

今回は、そのほかのスキーマとして、小さい頃に作られる「早期不適応的スキーマ」について紹介していきます。

小さい頃に作られるスキーマ

スキーマは、周囲との関係性や体験により作られていきます。

その中でも自分に害を成してしまうスキーマ(不適応的スキーマ)は、成長してからの辛い出来事からも作られていくのですが、実は大部分は幼い頃の体験によって形成されていると考えられています。

子どもの頃、周囲の大人との関係によって適度な”思い込み”を作ることができなかったことによって生まれるスキーマのことを、「早期不適応的スキーマ」と呼びます。

早期不適応的スキーマと、その原因となる事柄についてみていきましょう。

「ひとりぼっち・つながれない」スキーマ

自分は人から受け入れてもらえるという”思い込み”は、幼い頃、親から愛情や関心を注いでもらうことによって形成されます。

そのため、十分にそれらを得ることができなければ、「愛してもらえる」「守ってもらえる」「理解してもらえる」という自信を持つことができません。

結果的に、求めて萌えられず、信じてもどうせ裏切られるのなら、最初から期待する、関わるのをやめる方が良い、と無意識に結論付けてしまうのです。

代表的なスキーマ
「私は人に受け入れられない」
「うっかり信じると、酷い目に合う」
「自分には欠陥がある」 など

「自信がない・ひとりじゃできない」スキーマ

自分にはできる、成功させられるといった”思い込み”は、幼い頃、様々なことに挑戦し、成功することによって形成されます。

しかし、親が厳しくて失敗を貶されてしまったり、逆に過保護で挑戦自体させてもらえなかったりすると、十分な成功体験を積むことができません。

その結果、「やってもうまくいかないのではないか」という不安が強くなり、過剰に誰かに依存したり、周囲に合わせたりするようになってしまうのです。

代表的なスキーマ
「自分一人では何もできない」
「自分は何をやっても失敗する」
「自分を主張せず相手に同調しておいた方がよい」 など

「他者優先」スキーマ

自分の思いを自由に表現してよい、という”思い込み”は、幼い頃、自分のことを周囲に受け入れてもらう体験から形成されます。

例えば長男長女で小さい頃から弟、妹を優先する必要があったり、親が不安定で自分のことは二の次にして親の面倒を見なければいけなかったりすると、自分の望みや気持ちを外に出すと嫌われる、認めてもらえなくなる、といった恐れを持つようになってしまいます。

一見、ワガママを言わないのは良いことなのではないか、と思われるかもしれません。

しかし、対人関係に重要なのは「お互いに尊重し合うこと」です。

もちろん、相手の希望を無視して自分の望みばかりを通そうとするのは良くないですが、反対に自分のことを二の次にして他者に合わせてばかりいると、気分が落ち込んだり、自信を無くしたりしてしまい、心身を崩してしまうのです。

代表的なスキーマ
「人の役に立たない自分には価値がない」
「自分の価値は他人の評価次第なのだ」
「嫌われてはいけない」 など

「がんじがらめ」スキーマ

自由に過ごしてよい、楽しんだり、休んだりしてもよい、という”思い込み”は、幼い頃、自由にのびのびと過ごす経験を積んでいくことで形成されます。

小さい頃から高い目標で追い立てられたり、厳しい規則の中で育っていくと、「休むこと」や「楽しむこと」に罪悪感を持つようになってしまいます。

常に努力し続けるのは一見良いことのように見えるかもしれませんが、実際にはそれを続ければ心と体が持たないでしょう。

また、自分は努力を続けているのに、だらけたり、楽しそうにしている周囲の人が許せず、イライラしてしまうこともあるかもしれません。

代表的なスキーマ
「どうせいいことなんかない」
「手抜きをせず、とことん努力をすべきだ」
「失敗は許されない」 など

「野放し」スキーマ

物事には限度がある、他者は思いやる必要があるといった”思い込み”は、幼い頃、自分の欲求や衝動を親に諫められたり、周囲の大人の行動を見ていく中で形成されていきます。

他者優先スキーマとは反対に、自分はこうしたい、といった欲求を完全に放任されてしまうと、今度は他者のことを慮ることができなくなり、対人関係に悪影響を及ぼしてしまうのです。

代表的なスキーマ
「特別扱いされるべきだ」
「やりたいことは今すぐやりたい、欲しいものは今すぐ欲しい」 など

 

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