思い込みは強化されていく
昨日まで、2回に渡って思い込みによって作られたフィルターによる影響について考えてきました。
今回は、そういった思い込みが自分の中で育ち、強化されていくメカニズムについて説明します。
復習:思い込みと反応
思い込みと反応の関係は、これらの話の中でも核となる部分なので、繰り返し説明していきます。
わたしたちが持っている思い込みは、わたしたち一人一人が何を見て何を聞くかを選択する基準となります。
そして、見たもの、聞いたものを独自の思い込みによって解釈し、その解釈に合わせた反応を返します。
社会が”不況”になっているときの反応について、4つの思い込みのフィルターを通して見てみましょう。
「用心が第一。危険なことはしない方が良い」
この思い込みを持っていたとすれば、”不況”という社会現象は、「昇進に繋がるかもしれない挑戦を、実行”しない”ための根拠」として扱われるかもしれません。
先に進むためには、必ず「変化」を必要とします。
しかし、この思い込みを持っているならば、判断を先延ばし、現状の維持を優先するのです。
不況という情報を自分なりに解釈した結果、「変化を防ぐ」ための材料としての受け止め方になった、ということですね。
「変化は人生を面白くしてくれる」
この思い込みを持っていたとすれば、”不況”という社会現象を、「チャンス」としてとらえたかもしれません。
そのため、キャリアを推進するために不況の中あえて一歩を踏み出す選択をし、人生に変化をもたらしたかもしれないのです。
「自分は無能だ」
この思い込みを持っていた場合、「不況という状況の中、切られるのは役に立たない自分のような人間だ」と考えることでしょう。
それでは、その状況から脱却しようとして頑張るのでしょうか?
実際のところ、このような思い込みを持っている場合、人はその”思い込みに沿う”結果になるように動こうとします。
つまりは、すべてを諦めたというような態度で誰が見ても首切りの対象となるであろうポジションにとどまり、不況の犠牲となることを選んでしまう場合があるのです。
人は思い込みに合う結果を無意識に求める
さて、ここでひとつ、「壁」を突き抜けることに成功した人についての話をしたいと思います。
1954年、ロジャー・バニスターという選手が、それまで不可能と言われていた「1マイル4分」の壁を人類史上初めて突破しました。
するとその後、驚くようなことが起こりました。
なんと、他の選手からも、次々に1マイル4分の壁を突破する人が現れるようになったのです。
この理由には、実は「思い込み」が関係していると言われています。
それは、ロジャー・バニスターの功績により、他の選手たちの「人類に1マイル4分は突破できない」という思い込みが、「それは可能だ」という思い込みに変わったことです。
人は、「できるはずだ」と考えていると成功するものの、「できないだろう」と考えていると失敗してしまうことがあります。
これは、「できない」と考えている場合、それが逃げ道となり、辛いときに手を抜いてしまったり不安から全力を発揮できないことが原因と考えられます。
そのため、「できない」思い込みを持っていると物事に失敗しやすくなってしまう場合があるのです。
思い込みは強化されていく
人の思い込みは、その結果が思い込みに沿うものであった場合、より効力を強めていきます。
「用心が第一」と考えている人が、危険を避けるように動いた場合。
「変化は人生を面白くしてくれる」と考えている人が、変化を受け入れた場合。
「自分は無能だ」と考えている人が、首を切られるなどの結果になった場合。
いずれも、「やっぱり自分の思った通りだった」と感じ、次回からよりその思い込みに信頼を置くようになるのです。
するとますますその思い込みを前提として考えるようになるため、他の選択肢は見えなくなっていきます。
しかし、その思い込みから抜け出し、他の選択肢を見ることで初めて、ロジャー・バニスターの快挙のように、今より良い結果を見出すことができることがあることを忘れないようにしてください。