認知行動療法講座「復習:根拠と反証③」

認知行動療法講座

現在、高田馬場の就労移行支援事業所 リスタートでは、リモートによるプログラムを行っています。

今日は、認知行動療法のプログラムを行いました。

根拠と反証から適応的思考を作るのが重要なプロセスですが、なかなかわかりづらい部分でもあるので、重点的に復習を進めていきます。

例題

今回は、前回とは別の例題を用いて根拠と反証を探す練習をしました。

〇状況
会社で大きなプレゼンの担当に選ばれ、リハーサルをした。周りからはうまくまとめられたのではないか?と言われたが、自分にはまったく自信がない。

〇気分
1)落ち込み 80%
2)不安   70%

〇自動思考
1)プレゼンは成功させなければいけないのに、全然うまくいかなかった。まとめられていることなど、プレゼンをする以上当たり前のことだ。
(心のフィルター、マイナス化思考、べき思考)
2)自信がなく、不安でいっぱいなので、このままやったら本番のプレゼンもうまくいかないだろう。失敗したらみんなから批判を受けて、肩身が狭くなるに違いない。
(結論の飛躍、情緒的な理由付け)

根拠

まずは、自動思考が浮かんできた根拠を探していきます。

一つ目の自動思考は、「プレゼンは成功させなければいけないのに、全然うまくいかなかった。まとめられていることなど、プレゼンをする以上当たり前のことだ。」というものですね。

この自動思考の根拠となるのは、「すらすらと言えず、つっかえてしまったところがあった」ことです。

「成功させなければいけない」ことや、「まとめられているのは当たり前」であるということの根拠は見つかりませんでした。

二つ目の自動思考は、「自信がなく、不安でいっぱいなので、このままやったら本番のプレゼンもうまくいかないだろう。失敗したらみんなから批判を受けて、肩身が狭くなるに違いない。」というものですね。

この自動思考の根拠は、「本番では外部の人も見ている前でプレゼンをしなければいけない」ことと、「本番を前にして、強い不安を覚えている」ことです。

この自動思考については、”未来のこと”を決めつけてしまっているのがポイントとなりそうです。

反証

続いて、自動思考と”矛盾する事実”や”根拠のない思い込み”である反証を探していきましょう。

一つ目の自動思考に含まれている認知の歪みは、

・心のフィルター
・マイナス化思考
・べき思考

の3つです。

心のフィルターは、「ミスをしてしまった」ことのみに意識が向いて、うまくいっている部分が見えなくなってしまってしまう認知の歪みでした。

今回であれば、「全然うまくいかなかった」という部分に心のフィルターが隠れています。

「つっかえてしまった」事実にしか目が行かなくなっていますが、良く思い返してみれば、実はこのとき、同僚から「わかりやすかった」という感想をもらっていました。

であれば、それをそのまま反証とすることができるでしょう。

次のマイナス化思考は、うまくいったことを、「ダメなこと、大したことないこと」に変換してしまう認知の歪みでした。

今回は、「まとめられていることなど、プレゼンをする以上当たり前のことだ」という部分が該当しています。

実はこう考えたのは上司から「しっかりまとめられているな」と言われたからなのですが、この言葉をそのまま褒められたのだと受け取るようにしましょう。

三つ目の認知の歪みであるべき思考は、「こうする”べき”だ」という自分ルールに縛られてしまう認知の歪みでした。

今回は、「プレゼンは成功させなければいけない」という部分に含まれています。

もちろん、プレゼンは成功させることが望ましいのですが、「絶対に成功しなければいけない」という強い思い込みが不安を強めてしまっています。

例えプレゼンがうまく行かなくても、それで人生が終わるというわけではありません。

べき思考は、それを目指すことは変わらぬままで、表現を弱めることが反証になります。

二つ目の自動思考、「自信がなく、不安でいっぱいなので、このままやったら本番のプレゼンもうまくいかないだろう。失敗したらみんなから批判を受けて、肩身が狭くなるに違いない。」についても見ていきましょう。

・結論の飛躍
・情緒的な理由付け

結論の飛躍のうち、今回該当するのは先読みの誤りです。

「プレゼンが失敗する」
「みんなから批判される」
「肩身が狭くなる」

といった未来に起こることを「違いない」といった形で決めつけていますが、これらはすべて予測に過ぎません。

未来に起こることはいずれも可能性の1つであり、こうだと事前に決めることはできないのです。

また、情緒的理由付けは、今現在の気持ちや感情を理由にして事実を決めるという認知の歪みです。

“不安”という感情や”自信がない”ことを失敗の根拠にしていますが、こちらも同じく、根拠としては成立しません。

そのため、この自動思考には、実はしっかりした根拠が1つもないことになるのです。

反証としては、「本番まではまだ時間も残っている。やってみるまで、どのような結果になるかはわからない」といったものが考えられます。

 

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