選択理論の復習⑤ 行動の4つの要素
就労移行支援事業所 リスタート のSSTの中で、「選択理論」という考え方を紹介しています。
今回は、人の行動について4つの要素に分けて考えていきます。
行動の4つの要素
これまでの選択理論についての記事で、人の行動は、基本的欲求を満たすために上質世界に含まれているものを得ようとして起きるものであると説明してきました。
人は常に、自分にとってもっとも効果的と思われる行動を選択しています。
これはつまり、何かに失敗した時に「落ち込む」というのも、自分自身の選択であるということを意味しています。
今回は、選択理論に基づく行動のメカニズムについて説明していきたいと思います。
選択理論では、人の行動を「行為」「思考」「感情」「身体反応」の4つに分類しています。
私たちの行動はすべて、これらの行動のうちのいずれかに分類することができます。
行 為:歩く、話す、食べるなどの動作
思 考:考える、思い出す、想像するなど、頭を働かせること
感 情:嬉しい、悲しい、怒る、楽しいなどの感情
身体反応:汗をかく、呼吸をする、心拍数が上がるなど、意識していない体の反応
ただし、これらの行動はすべてが直接コントロールできるわけではありません。
「席を立ってください」
「犬がエサを食べているところを想像してください」
これらのように指示されたとしたら、言われた通りの行動がすぐにできると思います。
では、以下の指示についてはいかがでしょうか。
「怒ってください」
「心拍数を上げてください」
今の気持ちにかかわらず、直接怒りの感情を浮かべることはできませんし、自分の意思で心拍数をコントロールすることもできません。
このように、「行為」「思考」は直接コントロールできるのに対し、「感情」「身体反応」を直接コントロールすることはできないのです。
では、この指示に従おうとしたらどうすればよいでしょうか。
例えば、最近あった腹立たしい出来事を思い返すことで怒りの感情が湧いてくることはあるかもしれません。
また、しばらく走り回れば、心拍数も上がっていくでしょう。
これらはそれぞれ、「思考」と「行為」を変えることで、間接的に「感情」や「身体反応」をコントロールしています。
このように、直接のコントロールができない行動も、他の行動に関連づいて変化を起こすことができるのです。
ネガティブな感情も自分がコントロールしている
さて、ここで冒頭の「落ち込むこともコントロールしている」という話に戻りましょう。
これは決して、「ネガティブな感情が浮かぶのは自分のせいであり、そんな感情浮かべてはいけない」というような話ではありません。
むしろ、先ほど説明した通り、感情は直接のコントロールができないものなので、落ち込む気持ちが浮かんでくることも自然なことであり、決して悪いことではありません。
しかし、ネガティブな感情が浮かんでしまったあと、ずっとそのままにするか、それともそこから抜け出そうとするのかには自分自身のコントロールが大きな意味を持ちます。
「落ち込みという感情が浮かんでしまう」ことは自分の意思でコントロールした結果でなくとも、「”落ち込んでいる”という状態を選択し続ける」ことは自分の意思で決めていることになるのです。
落ち込みを選択していることには、メリットとデメリットがあります。
メリットとして、「怒りを抑えられること」「周囲の人に言葉を使わず助けてもらえること」「問題の原因から逃避できること」の3つを挙げることができます。
一方でデメリットとしては、「最初は心配されてもだんだんと周囲に悪印象を与えるようになってしまうこと」や「問題の解決を目指せないこと」などがあります。
ネガティブな感情が浮かんでしまった時には、その気持ちを持ち続けることが自分にとってプラスなのかマイナスなのかを考えて行動することが大切です。