社会不安障害ってどんな病気?-③

「社会不安障害」にかかった人の経過

苦手な状況を回避しようとする。

これが、「社会不安障害」をかかえる人の典型的な行動パターンです。

その心の中には、「変な人」と思われたくない! という思いが強く渦巻いています。

回避する場面が増えれば、日常生活に支障をきたしてしまうこともあります。

また、苦手な状況に陥らないように過剰な用心をして、内にこもりがちになります。

そうした行動が積み重なることで、社会的に十分な評価を得られなくなったり、孤立してしまうことこそが、「社会不安障害」がもたらす最大の弊害と言えます。

身体症状が気になる あがっているのがみんなにばれてしまう。小心者、変な人だと思われているかもしれない
なにを話せばいいのかわからない 頭が悪いやつだと思われるのではないか
うまくこなせる自信がない みんな自分のことをバカにしているんだろうな

 

ダメな奴とか、変な人とか、そんな風に思われるのは絶対に避けたい
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変人扱いされるぐらいなら、苦手な状況から逃げ出してしまおう

 

「社会不安障害」は、大きく2つのタイプ分けられます。

症状の現れ方だけでなく、なりやすい人、経過などに違いがみられます。

苦手な状況・場面がはっきりしている ほとんど全ての社会的場面をおそれる
限局型/非全般型 全般型/びまん型
「社会不安障害」をかかえる人のなかで多いのは、人前で話すときや、人前で字を書くときなど、ある特定の状況にのみ恐怖を感じるタイプ。 「全般性社会不安障害」と呼ばれる。他人とのかかわりが発生する状況は、ほとんど全て恐怖の対象になるタイプ。対人接触全般に強い苦痛を覚え、身体症状より精神的な苦痛がより大きい傾向がある
患者さんにみられる傾向
  限局型/非全般型 全般型/びまん型
結婚しているかどうか 既婚者が多い 独身が多い
発症年齢 比較的高い 比較的低い
アルコール依存やうつ病などの併発 少ない 多い

 
限局型/非全般型のように、苦手な状況がはっきりしていれば、比較的対処しやすいといえます。

症状が現れそうな状況に臨まざるを得ないときには、一時的に薬の助けを借りたり(薬物治療)、苦手意識を払拭するためにトレーニング(認知行動療法など)を積んだりすることで、改善を図ることが可能です。

一方「全般性社会不安障害」のように、他人とのかかわりが生じる社会的な場面すべてが苦手という場合、恐怖感ゆえ社会に出て行けず、孤立感を深めてしまうおそれがあります。

このような状況を、「対人恐怖」とも言われます。

程度はさまざまですが、重度の対人恐怖は、社会不安障害の範囲を超え、妄想性障害や人格障害などと重なります。

全般性社会不安障害も、治療によって改善は可能です。

家族など、周囲の人の働きかけ、受診を促すことが大切です。

「社会不安障害」にかかった人の傾向

最近のアメリカの研究では、一生のうちに「社会不安障害」にかかる人の割合は、0.5~16%。

10人に1人~2人の割合にのぼると報告されています。

また、発症年齢と受診年齢に大きなズレがあることも分かってきています。

「社会不安障害」は、比較的、低年齢で発症することが知られていますが、実際に医療機関を受診する人の年齢は、発症年齢より10歳以上も高くなっています。

症状に苦しみながらも、長い間、助けを求めずに我慢している人がいかに多いかが分かります。

「社会不安障害」は、放っておけば治るというものではありません。

むしろ、苦手な状況を避け続けることで社会的に孤立したり、うつ病など、ほかの病気の引き金になってしまうこともあるなど、慢性化しやすいことも分かってきています。

何年も悩み続ける必要はありません。早めの受診を心掛けましょう。

 

次回は、発症の原因、関連する病気など、を解説します。

 

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