社会不安障害ってどんな病気?-⑦
認知行動療法、前回の記事(概要と「手法1. 認知の修正」)はこちら
目次
認知行動療法の手法
手法2. エクスポージャー(暴露)
「苦手だ」「うまくいくわけがない」
そんな思い込みを正し、「不安はあるが、耐えられる程度だ」「意外と大丈夫だ」ということを身をもって体感するには実践が必要です。
苦手と感じている状況にあえて身を置くことで、不安や恐怖と真正面から対峙してみる。
これが、エクスポージャー(暴露)の基本的な考え方です。
逃げずに向き合っていれば、不安や恐怖は必ずやわらぎ、それを体感することで、徐々に「慣れ」が生まれていきます。
不安や恐怖に慣れるといっても、いきなり自分が一番苦手と思っている状況に直面するのは荷が重いかもしれません。
慣れていくためには、「苦手だが頑張ればできるかもしれない」レベルから、徐々に最終目標へと進めていくのが一般的です。
まずは、自分がどんなことを克服したいと思っているのか、どんなことに恐怖を感じるのか、具体的に考え直すことからスタートです。
自分が定めた目標に近いけれど、それほど大きな不安を感じないで済む状況を設定します。無理なく臨める状態から、徐々に難しい課題へと進めます。
計画した課題を一つずつ実行します。ひとつの課題に数回かけてもかまいません。課題がやさしすぎる、難しすぎると感じたら臨機応変に課題を立て直します。
▼エクスポージャーの効果を高める5か条
- 課題となる場面の設定は、自分でよく吟味する
- 不安をなくすことを目標にしない
- 一度で慣れることは期待しない
- 短い間隔で何回も繰り返す
- クリアできたら存分に自分をほめる
手法3. ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)
社交術(ソーシャル・スキル)を磨くことは、人づきあいを円滑なものにするために大いに役に立ちます。
そもそも人間は「社会的な動物」と言われます。
他人と話し、経験をともにすることで喜びを感じるものです。
そうした喜びとは逆に、かえって苦痛を感じる場合には、なぜ気持ちの良い付き合いができないのかを考えてみる必要があります。
先入観を捨ててしまおう
社交下手を自認する人は、人と人との関わりそのものに対して、良いイメージもっていないことが多いものです。
まずは、先入観を捨て、肯定的なイメージを持つことが必要です。
~否定的な考え~
- 「きっと行かなきゃよかったと思うのだろうな」
- 「どうせまた自分だけ浮いてしまうだろう」
~肯定的な考え~
- 「人と会話することは楽しいだろうな」
- 「自分の知らない話を聞くことで、世界が広がりそう」
これまでの先入観を捨てて、肯定的なイメージを重ねるトレーニングをしてみましょう。
社交を楽しむ自分を想像することで、その場に臨むことへのためらいは減っていくでしょう。
社交術を磨こう
第一印象で、相手に友好的なイメージを与えることができれば、その後の展開はスムーズにいくことが多いものです。
相手に好印象を与えるポイントは、「笑顔」と「姿勢」。
まずあなたから、にっこり微笑んで、友好的な態度を示せば、相手も友好的になるものです。
こうしてみよう
豊かな表情は、顔も筋肉を柔軟に動かすことで生まれます。
鏡の前で、目や眉、口を大きく動かし、いろいろな表情をつくってみましょう。
まず、ゆっくり呼吸して、肩の力を抜きます。
腕組したり、口元を隠したりしないで、近づいてくる相手に、体と顔をまっすぐ向け、微笑んでみましょう。
それが、「あなたを受け入れています」というメッセージになります。
会話
会話は社交の要のひとつではありますが、「会話の内容」は、実はそれほど重要ではないことが多いものです。
一説によれば、会話の内容そのものが相手に与える情報は10%にも満たないといいます。
初対面の場合、相手に与える印象のほとんどは、表情や姿勢、顔の向き、視線など、体が発する言語や、声のトーンなどによって決まります。
相手の話に耳を傾け、うなずくだけでも会話は成立します。
面白いことをいわなければ、と焦らず、「よい聞き手」を目指しましょう。
不安への対処法
治療を開始したからといって、すぐに不安や恐怖が消えてなくなるわけではありません。
不安や恐怖を逃がすテクニックを学んでおくことも、役に立ちます。
呼吸を整える
意識的に深く、ゆったりとしたリズムで呼吸をくりかえしてみましょう。
鼻からゆっくり吸って、口から細く長く息を吐くイメージです。
ツボを押す
手首の内側に走る横じわの少し下、2本の筋の間にある「内関」というツボを押すことで、緊張の高まりを抑える効果が期待できます。
筋肉を弛緩させる
ガチガチにこわばった筋肉をほぐすのも効果的。
こわばりがちな部位を中心に筋肉をリラックスさせます。
ぎゅっと力を入れたあとで、パッと脱力させる…この繰り返しが基本です。
生活習慣を見直す
心に苦痛を感じていると、生活習慣にも影響が現れてきます。
心身の疲れをため込まないために、以下のことをこころがけましょう。
- 一日3食しっかり食べて基礎体力をつける
- タバコはやめる
- 嫌な事を振り払うのにアルコールを利用しない
- 十分な睡眠時間を確保する
- 一日の終わりはゆっくり入浴してリラックスする
- とくに予定がない日も起床時間はできるだけ一定にする
- 体を動かす趣味をもち、定期的に運動する
そして、ふと湧き上がる不安に負けそうになったとき、不安に立ち向かう勇気をくれる、あなたにとっての「魔法の言葉」を見つけましょう。
「案ずるより産むがやすし」
「叩けよ しからば 開かれん」
「君は君、私は私」
「あしたはあしたの風が吹く」など…