強迫性障害ってどんな病気?-⑥

前回の「強迫性障害」の受診、診断などの詳細はこちら

「強迫性障害」は、ほかの心の病気と同じように、可能な場合は入院せず、通院しながら治療するのが基本です。

生活の幅を狭めないことが、治療する上でも大切です。

治療の進め方

「強迫性障害」の治療は、薬物療法認知行動療法を柱に、それまでの考え方や行動を変える取り組みを続けるのが効果的です。

定期的に通院し、薬の調整や生活面でのアドバイスを受けながら、強迫症状を改善する方法を学んでいきます。

一般的な治療の流れ

見立て
正しく診断し、治療方針を立てる
↓↓↓↓↓
心理教育
病状や治療について、本人や家族にわかりやすく伝える
↓↓↓↓↓
薬物療法
病状に合わせた薬が処方され、服薬を開始する
↓↓↓↓↓
認知行動療法
精神療法のひとつとして、認知行動療法などがおこなわれる
↓↓↓↓↓
リハビリテーション
社会復帰に向けた準備。必要に応じて社会資源の利用なども検討する

通院

通院できない事情などがなければ、通常は定期的に通院しながら治療します。

1~2週に1回くらいのペースで通院する

定期的に通院することで、自分の病気についての理解を深め、考え方や行動を変えていく取り組みを続ける。あわせて、薬の調整などもおこなう。

治療計画を調整する

認知行動療法を受ける場合は、医師と相談しながら治療計画をつくって実行し、面談の場で細かい調整をおこなう。

入院

強迫症状が重症化している場合は、入院治療も考えます。

入院した方がよい場合
  • 強迫症状を引き起こしやすい環境にあり、身動きがとれない
  • 重いうつ病を併発している
  • 重症で自立した生活ができない
  • 定期的に通院することが難しい
  • 家族の巻き込みがひどく、本人も家族も疲れきっている

薬物療法

「強迫性障害」の治療薬として用いられているSSRIは、脳内のセロトニンを介して治療効果を発揮する薬で、うつ病や不安障害の治療でよく処方されます。

ほかの薬にくらべて強迫症状を抑える効果が高く、副作用が少ないという利点があります。

ただ、即効性は期待できず、最低でも1か月は服用し、症状が改善してからも、しばらく封用を続ける必要があります。

また、残念ながら万能薬ではなく、服薬を続けても効果が出ないことがあります。

服用を開始したら、自分で勝手に服用量を変えたり、やめることは危険です。

急にやめると、めまいや吐き気、動悸やしびれなどの症状が出ることがあります(中断症候群)。

認知行動療法

認知行動療法は、薬物療法と並んで効果が高い治療法です。

患者さんを強迫行為にかりたてるのは、「なにかしなければ不安が強まる」という実体験。

しかし、逃れようと強迫行為を繰り返すほど、「強迫行為をしなくても不安は次第に小さくなるもの」という健康な体験ができなくなり、かえって恐怖や不安が高まります。

逃れようとせずに我慢していけば慣れが生じ、不安がやわらぎます。

そうした体験をつみ、「逃げなくても平気」と学習することが、症状の改善につながります。

強迫症状
冷蔵庫のドアがきちんと閉まっているかが気になり、何度も確認する症状がある
↓↓↓↓↓
考え方(認知)の修正
医師に正しい知識や情報を提供してもらったり、一緒に行動実験をして、心配する必要ないかもしれないと思えるようになる
↓↓↓↓↓
行動の修正
確認行為をしないで我慢する練習を繰り返す
↓↓↓↓↓
「馴化」が起きる
確認しないでいることの不安にだんだん慣れていく。こうして徐々に慣れることを「馴化(じゅんか)」という

認知行動療法を進めるうえで治療の第一歩になるのは、自分の状態を客観的に把握することです。

どんなときに、どれくらい不安になるか、具体的に振り返ることが必要です。

さまざまな強迫症状に苦しんでいる人が、全部一度に変えるのは無理というもの。
どこから手をつければよいのかわからなくなりがち
↓↓↓↓↓
自分の状態を客観視する
自分の強迫症状について客観的に見つめ直すことで、治したい症状を具体的に整理。
その結果、より具体的な治療プランをもつことができる
↓↓↓↓↓
目標と治す方法が見えれば治療への意欲も高まる

次回は、認知行動療法のひとつ「曝露反応妨害法」、その他の治療法を詳しくみていきます。

 

restart_banner