自閉症スペクトラム(ASD)ってどんな病気?-①

「自閉症スペクトラム」という言葉をご存じでしょうか?

「自閉症」という言葉は知っていても、「スペクトラム」という言葉は、聞いたことがない人が多いのではないでしょうか。

「自閉症スペクトラム」は、発達障害のひとつ。

子どもの頃から症状が出ることも多いですが、最近は、大人になってから「自閉症スペクトラム(ASD)」と診断を受ける人が増えてきています。

「自閉症スペクトラム(ASD)」とは

発達障害の中でも、「コミュニケーションが困難」「こだわりが強い」など、共通の特徴をもつ障害が3つあります。

●自閉症(知的障害をともなう)
●高機能自閉症
●アスペルガー症候群

  コミュニケーション 言葉の遅れ 知的障害 こだわり
自閉症 とても困難 ある ある ある
高機能自閉症 困難 ある ない ある
アスペルガー症候群 やや困難 ない ない ある

 

知的能力や言語の発達など、細かい点で違いはありますが、自閉症の仲間として共通している点が多いため、それらをまとめて「自閉症スペクトラム」(自閉症の集合体)と呼ぶことが多くなってきました。
「スペクトラム」とは、「連続体」「分布範囲」「集合体」などの意味があります。

「自閉症スペクトラム(ASD)」の特徴

「自閉症スペクトラム(ASD)」は、以下のような特徴があります。

●コミュニケーションが困難
●こだわりが強い

その他、いくつかの特徴が共通して見られますが、病気の症状というより、その人の性質(特性)と言ってもよく、その特性は、生活によい影響を与えることもあれば、逆に支障となることもあります。

特徴① コミュニケーションが困難

「自閉症スペクトラム(ASD)」と言われる人たちは、「コミュニケーションが困難」という傾向があります。

もっと詳しく言えば「臨機応変な人間関係が苦手」という特徴が共通してみられます。

以下に2つ例をあげてみます。

ケース①
大学生のA君は、飲み会の幹事をすることになりました。
先輩から「全員に参加を呼びかけるように」を言われたため、その時、病気で入院していた友人にまで電話して「参加するように」と強い口調で参加を促しました。
ケース②
5歳のB君は、ある日ひとりで公園の砂場で遊んでいました。
すると、C子ちゃんが、B君に「ねえ、ねえ。ひとりなの?」と声をかけました。
B君が全く反応しなかったので、C子ちゃんはその場から去っていきました。
ほどなくして、B君がC子ちゃんのところへ来て、こう言いました。
「ボクの家は5人家族だよ」

ケース①では、先輩から「全員に参加を呼びかけるように」と言われたので、A君は入院していた友人に電話しました。

行動としては間違っていません。

ケース②では、「ひとりなの?」という問いに対して「5人家族だよ」と答えるのは、不正解とも言えません。

しかし、どの場面でも、周囲の人たちから「どこか変わっている子だな」と思われてしまいます。

ケース①では、先輩が「全員」と言ったものの、入院している友人まで誘うことは、「いわずもがな、ありえない」という一般的な共通認識が欠けています。

ASDの場合、共通認識や暗黙の了解といった曖昧なものを察することが難しかったり、理解できずにいることが多く見受けられます。

ケース②で、C子ちゃんが「ひとりなの?」と聞いたのは、家族の人数を聞いているのではなく、暗に「よかったら一緒に遊ばない?」と誘っているのです。

直接、誘う言葉を使わなくても、多くの子どもたちはピンときますが、ASDの人には、その共通認識が理解できない、または察することができないことが多いのです。

このように、コミュニケーションのすれ違いが、生活する上で支障となり、ストレスがつのって不登校やうつ、不安、身体症状などの問題が起きることがあります(二次的問題)。

特徴② こだわりが強い

「自閉症スペクトラム(ASD)」と言われる人たちは、「こだわりが強い」という傾向があります。

もっと詳しく言うと「自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたい本能的思考が強い」という特徴が共通してみられます。

知的発達の遅れが目立つ人では、幼少期に手をひらひらさせたり、体を揺らすなど、同じ行動や行為を目的もなく何度も繰り返す「常同行動」が多く見られます。

決まったパターンが変化すると強い抵抗を起こし、パニックと呼ばれる現象や、自傷行為、他害行為などがみられます。

知的発達の遅れが目立たない人でも、こうした行動が目立つことがあります。

年齢が上がると、強い興味やパターン化の対象が、より知的な活動や社会行動へと移っていきます。

得意分野で「〇〇博士」と呼ばれるほど、機械的記憶に優れてる場合や、なんでも他者と競いがり、一番にならないとパニックを起こす場合もあります。

また、社会的ルールは守れるようにはなりますが、逆に守りすぎる、自分だけではなく、他人も守らないと怒る、などの特徴がみられることもあります。

このように、「自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたい本能的思考が強い」=「こだわり」は、「自閉症スペクトラム(ASD)」で重要な特徴といえます。


次回は、「自閉症スペクトラム(ASD)」でみられるその他の特徴などをみていきます。

 

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