自閉症スペクトラム(ASD)ってどんな病気?-⑩
前回のASDの子が「生活面で身につけたい2つのスキル」の詳細はこちら
目次
年代別の支援のポイント
幼少期の支援のポイント①
保護的な環境で自信をつける
「自閉症スペクトラム」の子どもがまだ小さいうちは、課題に取り組む意欲が薄いので、やさしい目標を設定します。
社会への関心や、社会性を持って行動するようになるのは、だいたい小学校高学年くらいです。
課題に意欲を持つことはまだ難しいので、本人の努力は求めない方がよいでしょう。
まずは、成功しやすい環境を整え、自然に課題を達成できるようにして、意欲を育むことを目指します。
×よくない対応…失敗を放っておく |
子どもが失敗を繰り返している時に、保護者が「それも経験のうち」と、そのままにしておくのは、よくありません。失敗体験が積み重なり、子どもの意欲が失われます。 |
○よい対応…成功体験を守る |
やさしい課題にする 子どもに身につけて欲しいことを列挙し、その中ですでに出来つつあることをひとつだけ選び、課題とします。 失敗に目をつぶる 課題がうまくできなかったり、課題以外のところで失敗しても、それを強く叱責しないようにします。 |
幼少期の支援のポイント②
こだわりを「役立つこだわり」として残す
「こだわりが強い」ということが生涯変わらないのなら、それを良い形で残しましょう。
例えば、几帳面なところを生かし、整理整頓などを手伝ってもらうなど、誰かが整理しなければならないことの管理を、子どもに少しずつ任せていきます。
こだわりを生かすポイントは、保護者にとって望ましい形に「変える」より、役立ちそうなものを「残す」感覚で取り組みます。
×よくない対応…失敗を放っておく |
こだわりの力をもとにして、学習や成長をうながすとことは避けましょう。いまより高い能力を求め、子どもを苦しめてしまいます。 |
○よい対応…役立つこだわりを残す |
こだわりを理解する 子どもの様子を観察し、どんなこだわりを持っているか理解していきます。こだわりの変化にも注目します。 役立つ形で残す いまのこだわりを生活に組み込みます。「ものの置き場所」にこだわりがある子の場合、生活に支障がないものは、他の家族も同じ場所に置くことを守るようにします。家族全員にとって、道具を管理しやすい環境ができます。「確認好きな子」なら、家族で出かける時のドア、窓の施錠チェック係に任命します。 |
幼少期の支援のポイント③
合意の取り方を練習する
「自閉症スペクトラム」の子にとって理解しやすい枠組みをつくることを「構造化」と呼びます。
子どもが理解できなかったり、嫌がったりした場合は、他の方法を考える必要があります。
構造化しても、子どもへの押し付けになっていては、意味がありません。
日頃から家族でよくコミュニケーションをとり、合意をつくる習慣をつけましょう。
子どもは「お母さん(お父さん)は、いい提案をしてくれる」と考えはじめ、信頼関係ができます。
×よくない対応…一方的なやりとり |
家族間のやりとりが、どちらか一方からの要求になっている場合、スキルがなかなか育ちません。「全て命令」、「全て子どもの自由」では、ストレスが溜まったり、一貫性のない制限に繋がるため、子どもは混乱、やがて情緒的に不安定になります。 |
○よい対応…提案して合意する |
家族でよくコミュニケーションをとり、子どもへ「こうしたらどうか」と提案しましょう。子どもが同意したら、それを活動の規範とします。子どもからの要求も同様に、合意をとるようにします。 |
幼少期の支援のポイント④
人に報告、相談する習慣をつける
大人でも「報告、連絡、相談」を習慣づけるのは難しいと言われます。
「自閉症スペクトラム」の子は、幼少期から「人に話してうまくいった」という経験を積むことで、報告、相談などのスキルを習得できます。
子どもが困って相談してきた時に、課題が達成できるように手助けすると「相談したほうがいい」という認識が生まれます。
×よくない対応…子どもひとりで作業させる |
家族間のやりとりが、どちらか一方からの要求になっている場合、スキルがなかなか育ちません。「全て命令」、「全て子どもの自由」では、ストレスが溜まったり、一貫性のない制限に繋がるため、子どもは混乱、やがて情緒的に不安定になります。 |
○よい対応…家族で一緒に取り組む |
子どもがうまくできるようになった活動でも、幼少期は保護者が見守るようにします。子どもからの報告、相談には必ず応じるようにします。 報告を手順に組み込む 子どもに手順を示す時、最後に保護者へ報告することも組み込んで、共同作業という認識を持たせます。 相談には必ず応じる 子どもからの相談には必ず応じます。言葉での相談以外に、作業が止まっていたり、困っていたりしたら助け舟を出します。 |
次回は、「思春期以降の支援のポイント」を詳しく見ていきます。