リス太と学ぶ認知行動療法 ~鏡の技法/言葉を置き換える技法~

前回までの「リス太と学ぶ認知行動療法」はこちらから

さて、前回約束した通り、今日は一人でできる二重の基準技法について紹介するよ!
待ってました!
この方法を使うのに必要なものは1つだけ!
それはいったい何?
「鏡」だよ!

 

鏡の技法

鏡なんてどうやって使うの?
基本的なやり方は、前回のパートナーとやった声の外在化と同じだよ!
否定的思考を声に出して、それに対して友人に語り掛けるようにやさしく話しかける・・・っていう感じだったよね?
そうそう。鏡を使う場合は、鏡に映った自分に向けて一人称を使って否定的思考を声に出すんだ。
ふむふむ。
否定的思考を言い終わったら、今度は親友の相談に乗るつもりで、否定的思考に反論し、思いやりを持って鏡の中の自分を守るんだ。
なるほど。パートナーに言ってもらう代わりに、鏡の中の自分を自分とよく似た別の人間だと考えるんだね。
そうそう! それじゃあ、一回試しにやってみようか。
わかったよ。鏡を用意して・・・
まずは、否定的思考から!
「僕はヘマばかりやっている。僕は敗者で、落伍者なんだ!
今度は、鏡に映っているのは自分の親友であると考えてみて。
落ち込んでいる彼を元気づけてあげるんだ。
「僕の言うことを聞いて!確かに君は、よく失敗するかもしれない。でも、それは誰にでもあることなんだ。
君には長所もあれば短所もある。勝つこともあれば負けることもある。だからこそ、人間らしいんじゃないか。
欠点があるのなら、直す努力をすればいいんだよ!」
さて、どうだろう。自己弁護の後は、新たに否定的で自己批判的な思考が浮かんできたんじゃないかな?
うん。そうだね。これは言ってもいいの?
大丈夫! 鏡に映った自分との対話を続けてみて!
「でも、いつもいつも、ここまで落ち込むべきではないと思うし、やっぱり何か自分に悪いところがあるんだよ。僕は欠陥人間なんだ!」
鏡を見たまま、もう一度反論してみよう!親友に話すようにやさしくね?
「そりゃあ、君がいつもそんなに落ち込むことはないほうがいいよ。
時間が経てば、君の気分も良くなるでしょう?憂うつな気分になると言うことは、君の感じ方に何かうまく行かないところがあるってことじゃないかな?
それと、欠陥人間かどうかということは、これとは無関係だよ!」
うんうん、いい感じだね。
鏡があると、自分を相手にしているにもかかわらず、普段自分に対して取っている態度と変えるっていうことが意識しやすくなるね。
ところで今、K君は自然に、思考の歪みを取り除く15の方法のうちの1つを使ったね。
自分で気づいていたかな?
ええっ?無意識だったよ。なんのことだろう?
それはね・・・。

言葉を置き換える技法

言葉を置き換える技法って、どんなものだったか覚えてる?
ええと、客観的で感情的でない言葉に置き換えるんだったよね? どこでやっていただろう。
「いつもいつも、ここまで落ち込むべきではない」って言っていたんだよ。これは、べき思考だよね?
うん、確かにそうだね。
K君はそれに対して、「君がいつもそんなに落ち込むことはないほうがいいよ」って答えていたね?
言ったけど・・・それは同じ意味じゃないの?
確かに、意味するところは同じかもしれない。だけど、「落ち込むべきではない」と「落ち込まないでいる方が望ましい」では、感じ方が違うと思わない?
あ、本当だ。簡単な言葉の言い換えなのに、元の言い方にあったトゲが抜けているというか・・・
そうそう。こんなふうに、言葉を置き換えるだけで、気持ちは大きく変わってくるんだ。
それで、「べき思考」に効果的と言われているんだね。
そして、「レッテル貼り」にもね。「欠陥人間」というレッテルを言い換えるならどうなるだろう?
ええと・・・「憂うつな気分を感じている一人の人間」とか?
いいね。その調子で大丈夫だよ!
心の中の、否定的な部分と肯定的な部分の対話。これが鏡の技法なんだね。

 

restart_banner