認知行動療法講座「復習:根拠と反証②」
認知行動療法講座
現在、高田馬場の就労移行支援事業所 リスタートでは、リモートによるプログラムを行っています。
今日は、認知行動療法のプログラムを行いました。
今回は、前回に引き続き、「根拠と反証」の復習をしていきます。
例題
前回は、以下の例題に対して根拠を探しました。
〇状況
同僚と共に任されたプロジェクトにミスがあり、上司に指摘されてしまった。その翌日、同僚が飲みに誘われているのを見たが、自分は誘われていない。
〇気分
1)無力感 70%
2)自責感 70%
3)落ち込み 80%
〇自動思考
1)私はまたミスをしてしまった。どうして私は何をやってもだめなんだろう。(極端な一般化,心のフィルター)
2)同僚は上司に飲みに誘われたのに自分は誘われていない。自分は上司に嫌われてしまったのだ。(心の読みすぎ)
3)同僚もミスをしていたが、大したものではなかった。しかし、自分は重大なミスを犯してしまった。自分は役に立たない人間なんだ。(白黒思考,過大評価、過小評価,レッテル貼り)
前回見つけた根拠は以下の通りです。
「今回ミスをしてしまった」
「以前にもミスをしたことがある」
「同僚は上司に飲みに誘われたが自分は誘われていない」
「同僚と作業をしている中でミスをしてしまった」
これらはいずれも実際に起きたことであり、自動思考が浮かんでくる要因となったと考えられます。
一方で、同僚のミスが大したものではなく、自分は重大なミスを犯したと考えていることについてなど、根拠となる事実が見つからない自動思考についても見えてきました。
反証
では、続いて自動思考と”矛盾する事実”や”根拠のない思い込み”である反証を探していきましょう。
自動思考に含まれている認知の歪みに注目し、考えていきます。
一つ目の自動思考、「私はまたミスをしてしまった。どうして私は何をやってもだめなんだろう」に含まれている認知の歪みは、
・極端な一般化
・心のフィルター
の2つです。
極端な一般化と言えるのは、今回のミスと以前のミスを、「何をやってもだめ」と拡大してしまっている部分です。
極端な一般化があるときには、過去の出来事から例外を見つけることで反証を作ることができます。
そこで以前の仕事を振り返ってみると、今回のプロジェクトが始まるまでは、問題なく仕事をこなし、叱られたこともなかったことに思い当たります。
これまでの仕事がうまくいっていた以上、「何をやってもだめ」というのは現実と矛盾してしまっています。
次に心のフィルターですが、「ミスをしてしまった」ことのみに意識が向いて、うまくいっている部分が見えなくなってしまっています。
心のフィルターがあるときは、そんな”うまくいっている”ことがないか考えてみましょう。
すると、注意を受けたところ以外は特に問題なく進んでおり、進行も遅れていないことに気が付きました。
「以前の仕事は問題なかった」し、「今もミスを注意された以外は順調に進んでいる」という事実が、この自動思考に対する反証です。
二つ目の自動思考、「同僚は上司に飲みに誘われたのに自分は誘われていない。自分は上司に嫌われてしまったのだ」に含まれている認知の歪みは、
・心の読みすぎ
です。
今回で言えば、「上司に嫌われてしまった」というように、他者の気持ちを決めつけてしまっている部分が該当します。
心の読みすぎがあるときは、他者が考えていることを知ることができず、複数の可能性があるのだと視野を広げてみます。
ミスの指摘を受けたことは確かでも、それ以外にとりわけ文句や嫌味などを言われたわけでもなく、誘われなかったのが”嫌われた”からであるという根拠はどこにもないということが反証となります。
三つ目の自動思考、「同僚もミスをしていたが、大したものではなかった。しかし、自分は重大なミスを犯してしまった。自分は役に立たない人間なんだ」に含まれている認知の歪みは、
・白黒思考
・過大評価,過小評価
・レッテル貼り
の三つです。
白黒思考は、物事を白か黒か、成功か失敗かに二分してしまう認知の歪みで、今回の場合は「自分はミスをしたから役立たずだ」という決めつけが該当します。
このようなときは、自分の仕事に点数を付けて評価してみましょう。
「ミスはあったがそれ以外は問題なく、進行が遅れているわけでもないので60点」というように、白でも黒でもない、灰色の部分を評価しやすくなります。
過大評価・過小評価については、客観的な視点を持つことが重要です。
ちょうど今さっき自分の仕事を60点と評価したので、同僚の仕事はどうだったのかを分析してみましょう。
自分のミスが重大で同僚のミスは大したことがない、という認知には根拠がない以上、そんなに大きな点差が開くことはないのではないかと思います。
レッテル貼りについては、自分に対しての「役に立たない人間」という決めつけが該当します。
レッテルに対抗するには、そのレッテルとは別の側面を探す方法が有効です。
例えば、「”プロジェクトに抜擢された”ということは、ある程度の評価はされているのではないか」と考えれば、”役立たず”という側面だけではないということが見えてくるのではないかと思います。