認知行動療法講座「適応的思考」

認知行動療法講座

現在、高田馬場の就労移行支援事業所 リスタートでは、リモートによるプログラムを行っています。

今日は、認知行動療法のプログラムを行いました。

根拠と反証について重点的に復習してきましたが、今回はそれらを使って作る”適応的思考”についてです。

適応的思考

適応的思考とは、”現実的”で”柔軟”な考え方のことです。

第3のコラムで見つけた自動思考には、反証を探すことで見つかった通り、多くの推測や思い込みが含まれていました。

そしてその推測や思い込みによって現実よりも”悪く”物事を受け止めていたことが、ネガティブな感情が強く浮かぶ原因となっていました。

適応的思考は、そんな自動思考の代わりになるものです。

適応的思考は、以下のようにして作ることができます。

根拠と反証を繋げる

もっとも単純にして効果的な方法です。

根拠と反証を挙げて、その間を「そして」で繋ぐことで、ある程度バランスの良い文章を作ることができます。

以前に使った「メールを送ったのに返事が来ない」ことに対して、「私のメールが気に障ったんだ」という自動思考で悩んでいた例で考えてみましょう。

この例において、根拠は「メールをしたのに返信が来ない」こと、反証は「以前にも同じような内容のメールを送ったが、すぐに返ってきた」ことでした。

そのまま繋げた場合はこうなります。

「メールをしたのに返信が来ない。そして、以前にも同じような内容のメールを送ったが、すぐに返ってきた」

日本語のつながりとしては少々違和感がありますが、「返信が来ていない」という事実は受け入れつつ、自分のメールが気に障ったことに対する反証が含まれることで、元の自動思考よりも現実的でバランスの良い考えになってきています。

文章を整える

ここから文章を整えていくのですが、そのための方法としては以下が挙げられます。

・親しい人が同じ状況で、同じように悩んでいたらどうアドバイスするかを考える

他者に対しては客観的に状況を判断できるのに、自分のことについては思い込みに邪魔されて厳しく考えてしまうことがあります。

そこで、自分ではなく親しい人が今の自分と同じ状態にあったとしたら、なんと声をかけるか考える、という方法があります。

・最悪/最良/現実的なシナリオを考える

元の自動思考がすべてその通りの真実だったとして、まずはそこから導き出される最悪のシナリオを考えてみます。

自分の身に降りかかるすべてが予想通り悪いことだったとしたらどうなってしまうでしょうか。

続いて、反対に最良のシナリオを考えてみましょう。

予想していた悪いことは全く起きず、むしろラッキーなことや自分にとって良いことばかりが連続して起こるのはどのようなシナリオになるでしょうか。

恐らく、最良のシナリオを考えてみると、「こんな風に進むはずがない」とか「ばかばかしい」といったふうに感じるのではないかと思います。

しかし実のところ、最良のシナリオと最悪のシナリオは、極端に「良く」捉えているか、極端に「悪く」捉えているかの違いでしかないのです。

最後に、これらのシナリオの中間について考えてみてください。

良いことばかり起こるわけでも悪いことばかり起こるわけでもない、そのシナリオこそが、最も「現実的な」シナリオに近くなるはずです。

・信頼している人ならどうするか想像する

もしも、誰か自分が信頼している人が、今の自分と同じ状況になったらどう考えるか想像してみるというのも良い手です。

先ほどは、親しい人が悩んでいたら自分がどうアドバイスするか、という考え方でしたが、直接他の誰かの考え方を再現してみることによって新しいものの見方が見えてくることもあるのです。

さて、これらを踏まえて「メールが来ない」のは「私のメールが気に障ったんだ」という自動思考に代わる適応的思考を考えてみましょう。

今回であれば、「メールにまだ返信がないのは事実だが、以前に同じような内容のメールを送った時はすぐに返ってきたし、自分のメールが原因で返信が遅れているとは限らない。」

といったところでしょうか。

起きた事実は事実と認めつつ、それ以外の自分が予測している部分について現実的に考えられた、「適応的思考」を作ることができました。

 

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