強迫性障害ってどんな病気?-⑤

前回の「強迫性障害」の特徴、発症の原因、発症しやすい性格はこちら

「強迫性障害」を放っておくと、患者さんだけでなく、ときには周囲の人も症状に巻き込まれて、疲れ切ってしまいます。

そうなる前に、悩みがあるなら受診を考えてみましょう。

受診から治療までの流れと、治療でどんなことが行われるのか解説します。

受診

近年、「強迫性障害」の治療は、大きく進化しています。

しかし、適切な治療を受けているのは患者さんの一部にすぎないという報告があります。

過剰な洗浄による手荒れを皮膚科で治療しているだけで、強迫症状自体は放置されていることもあります。

適切な受診先を選ぶことは、適切な治療を受けるための第一歩になります。

適切な受診科

心の病気や神経系の病気を扱う診療科は複数あり、それぞれに専門とする内容が違います。

  • 精神科/精神神経科
    「強迫性障害」をはじめとする心の病気を専門にみている。薬物療養はもちろん、医療機関によっては認知行動療法も行っている。
  • 心療内科
    心の問題が、体の症状の背景にあると考えられる病気を扱っている。「強迫性障害」の治療も受けられる。

受診先を選ぶときのポイント

精神科と一口にいっても、医療機関のタイプはいろいろありますし、治療の得意分野もさまざまです。

「強迫性障害」の治療に習熟した治療者のいる医療機関を選ぶのがよいでしょう。

  • 「強迫性障害」をよく知っている
    「強迫性障害」の治療は、薬物療法と、精神療法の一種である認知行動療法の二本柱が効果的といわれています。薬を処方するだけでなく、精神療法にも力を入れているところがよい。
  • 信頼関係を育てられる
    治療中は、定期的に医師との面談を繰り返すため、患者の話をきちんと聞ける医師、患者が信頼感を持てる医師と出会えばベスト。
  • 治療方針がしっかりしている
    どのように治療していくか、治療方針をしっかり立て、わかりやすく説明してくれるところがよい。

診断

強迫的な症状があるなら、すべて「強迫性障害」というわけではありません。

医療機関を受診したら、まず現在の状態を医師に伝えます。

じっくり話すことで、多くの場合、「強迫性障害」か、別の疾患なのか、だいたいの診断がつけられます。

ただし、不合理性の自覚がうすい場合などは、妄想との区別が難しく、診断がつきにくいこともあります。

正確に診断するために、経過をみていくことが必要な場合もあります。

「強迫性障害」を診断する際の基準

現在の医療現場では、主に2つの診断基準が用いられています。

  • DSM-IV-TR
    アメリカ精神医学会が定めている「精神疾患の分類と診断の手引」。精神疾患を診断する基準を示したもので、国際的に用いられる。
  • ICD-10
    WHO(世界保健機関)による国際疾病分類。DSM-IV-TR同様、代表的な診断基準として用いられている。

また、「こんな状態はおかしい」と思っていても、治療が必要な状態かどうか、迷うこともあるでしょう。

病状の程度を客観的にはかる質問票でチェックしてみましょう。

実際にチェックしてみよう

モーズレイ強迫検査(邦訳版)は、治療で用いられる検査ですが、自分の状態を知るために定期的に自己チェックしてみるのもよいでしょう。

得点の上下が、病状の変化の目安になります。

モーズレイ強迫検査(邦訳版)

各項目の質問に「はい」「いいえ」で答えてください。

1. 不潔だと思うので、公衆電話は使わないようにしています はい いいえ
2. いやな考えに取りつかれて、それからなかなか離れられません はい いいえ
3. 私は、人一倍正直であろうと心がけています はい いいえ
4. 何事も時間通りにできないせいだと思いますが、よく遅れてしまいます はい いいえ
5. 動物に触れるのが、あまり汚いとは思いません はい いいえ
6. ガスの元栓や、水道の蛇口、ドアの鍵などを閉めたかどうか何度も確認しないと気が済みません はい いいえ
7. 私は、非常に融通のきかない人です はい いいえ
8. 毎日のように嫌な考えが意思に反してわき上がってきて困っています はい いいえ
9. 偶然、誰かとぶつかるかどうかと過剰な心配をすることはありません はい いいえ
10. 日常の何でもないことをしていても、これでいいのかとひどく疑問に思ってしまいます はい いいえ
11. 私は子どもの頃に、両親はどちらも特に厳しくありませんでした はい いいえ
12. 何度も繰り返してやり直さないと気がすまないので、仕事が遅れることがあります はい いいえ
13. 石鹸は普通の量しか使いません はい いいえ
14. 私には不吉な数字があります はい いいえ
15. 手紙を出す前に、何度も相手の住所や名前を確認することはありません はい いいえ
16. 朝の身支度にそれほど時間はかかりません はい いいえ
17. 私はそれほど潔癖症ではありません はい いいえ
18. 細かいことまで、あれこれ考えすぎてしまって困っています はい いいえ
19. 手入れの行き届いたトイレなら何のためらいもなく使うことができます はい いいえ
20. いま困っていることは、何度も確かめないと気がすまないことです はい いいえ
21. バイ菌や病気などのことは特に気になりません はい いいえ
22. 私は何度も確かめる方ではありません はい いいえ
23. 日常生活をどのように行うか厳密に決めていません はい いいえ
24. お金に触れると手が汚くなると思いません はい いいえ
25. 普通の時に、数を確認しながらすることはありません はい いいえ
26. 朝の洗面に時間がかかります はい いいえ
27. 多量に消毒液を使うことはありません はい いいえ
28. 何度も確かめるので、毎日ひどく時間がかかってしまいます はい いいえ
29. 帰宅後、服をかたづけるのにあまり時間はかかりません はい いいえ
30. いくら慎重に行ったところで、うまくいかないと思うことがあります はい いいえ
得点のつけ方
1、2,3,4,6,7,8,10,12,14,18,20,26,28,30は、「はい」が1点。
それ以外は「いいえ」が1点。
13点以上で、「強迫性障害」が疑われる。

次回は、「強迫性障害」の治療法を詳しくみていきます。

 

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