強迫性障害ってどんな病気?-⑨
前回、「強迫性障害」からの回復に向けて本人ができること、はこちら
「強迫性障害」の患者さんを手助けする上で一番大切なことは、やめたくてもやめられずに苦しんでいる本人の苦労を理解することです。
理解があってはじめて、患者さんも安心して家族に相談できるようになります。
症状を悪化させないため、患者さんの家族はなにができるのでしょうか。
患者さんの家族のあり方
「強迫性障害」の患者さん本人がひとりで病気に立ち向かうのは、簡単なことではありません。
身近な家族が治療の協力者となり、患者さんの気持ちを汲んで支えていきましょう。
そのためには、病気や治療に関する正しい知識と、思いやりの気持ちをもとに、適切にサポートすることが大切です。
普段の接し方を理解する
どんなに身近な家族でも、初めは患者さんの対応で悩んだり、困ったりするものです。
病気への正しい理解にもとづき、対応することが回復に向けたサポートになります。
心理教育
治療者と対話を重ねながら、病気のメカニズム、本人の病状について理解を深めることを「心理教育」と言います。
可能な場合、家族も患者さんといっしょに心理教育を受け、病気の正しい知識を持つことが、回復へ向けた支援になります。
- 通院するようにうながす
- 治療の協力者になる
- しからない・無理に止めない
- 強迫行為に手を貸さない
サポートに必要な4つのポイント
「強迫性障害」は、患者さんの意思が弱いせいで起こるわけではなく、だれのせいでもありません。症状の悪循環が起こるしくみや治療法について、正しい知識を身に着けましょう
患者さん本人のつらさを汲んで、思いやりをもって接する
正しい知識と思いやりをもとに、患者さんと家族の負担を軽くして治療を進める工夫をすることが大切
「強迫性障害」の治療は簡単にはいかないし、一進一退を繰り返すもの。根気よくサポートすることが大切です
巻き込み行為への対応
患者さんひとりで不安を抱えきれず、家族を巻き込むことがありますが、問題に手をつけず、家族が言いなりになっていては本人の病気はよくなりません。
家族が巻き込まれてする行動には、患者さん本人の強迫行為と同じように、病状を悪化させます。
「家族への巻き込み行為は、結果的に病状を悪化させる」という共通認識を、患者さんと家族で共有することが大切です。
また、巻き込み症状の不安階層を表にして、減らせそうなところから一緒に考えます。
どんなときに、どのように家族を巻き込んでいるのかをリストアップして、減らしていけそうな行為はどれかを一緒に考える
内容を決めたら、それに対してなるべく巻き込み行為をせず、我慢する努力を患者さん本人、家族がおこなう
乱暴行為がある場合
患者さんの強迫行為を無理に止めようとする、巻き込み行為に応じないなど、家族の対応が本人を刺激し、暴力に繋がってしまうことがあります。
乱暴行為があると、家族は患者さんの要求に応じてしまいがちです。
一時的に平穏は得られますが、家族への要求がエスカレートし、病状の悪化に繋がる可能性があります。
まずは、いったん距離を置き、対応を見直す、または折り合いのつけ方を見つけていきましょう。
- 安全確保を優先
身の危険を感じるような乱暴行為があるときは、まず物理的に距離をおき、お互いに冷静になることが大切です。 - コミュニケーションの再開
本人が落ち着いたら、コミュニケーションを再開します。本人が苦しんでいることに共感したうえで、「乱暴行為がおそろしいこと」「本人の言いなりになって病状を悪化させたくない」ことを少しずつ伝えます。 - 折り合いのつけ方を見つける
本人の要求に応じると病状が悪化し、乱暴によって家族関係が破壊されかねないことを共通認識します。治療者を交えて話し合い、試行錯誤していきます。
家族自身の楽しみも大切に
患者さんの治療を第一に考えた生活を続けてしまうと、家族の負担は大きくなります。
患者さんのために、と家族の楽しみを諦めてしまうと、家族自身も余裕を失い、病状の悪化に繋がりがちです。
家族も楽しみを持ち、リフレッシュできると、本人への接し方にも余裕が生まれ、よい結果に繋がります。
うまくサポートするためには、家族が息抜きする時間も必要なのです。
- 家族全員で役割を分担する
- 家族それぞれ自分の時間をもつ
- くつろいで楽しむ機会を大切にする