自閉症スペクトラム(ASD)ってどんな病気?-⑨
前回の「療育法を用いた支援」「学校・職場・地域での支援」の詳細はこちら
「自閉症スペクトラム」の子は、得意、不得意がはっきり分かれています。
得意なことを「自律スキル」として生かし、さらに「ソーシャルスキル」を身につけて、苦手なことは人に頼るようにしていくと、社会生活に適応しやすくなります。
2つのスキル
得意なことを伸ばすのは重要ですが、それだけでは苦手なことへの対応がなかなか身につきません。
苦手なことは、人に頼る。
得意でも苦手でもルールを守ることを、教えていきましょう。
自律スキル
自分をコントロールするスキルのこと。
自分に何が出来て、何が出来ないかを知り、出来ることを着実にこなすスキルをいいます。
保護者はまず、子どもの得意なことや興味があることを尊重し、その分野の能力が伸びていくよう支援します。
同時に、子どもの苦手なことに関しては、努力や克服を求めるのは避け、出来ないことには「できない」と自信を持って言えるようにします。
几帳面な特徴を生かして、施錠の確認を子どもの役割にする。「自律スキル」が発揮される。
ものの分類や整理が好きな子に、皿を洗って片づけることを任せると、その体験を通して自信を持てるようになる。
ソーシャルスキル
社会と適切に関わるためのスキル。
「自閉症スペクトラム」の子の場合、人に相談すること、社会のルールを守ることが重要になります。
社会常識をルールにして明確化すると、それを守ることはASDの子はむしろ得意です。
相手に合わせる協調性や、相手の気持ちを読み取る協調性を発揮するのは苦手なので、その点を補うために、社会性をルール化するわけです。
しかし、生活しているとルールに当てはまらないことも出てきます。
そういう時には、人に相談できるように、相談の仕方も教えていきましょう。
学校で分からないことがあったら、休み時間に先生に聞く。ソーシャルスキルを使って、社会にうまく頼る。
スキルを身につける
「トップダウン式育児」で、出来ることを優先
「自律スキル」と「ソーシャルスキル」。
この2つを身につけるためには、まず子どもがいま出来ていることに目を向けます。
「自閉症スペクトラム」の特徴があると分かっていても、保護者は子どもの目標を高く設定しがちです。
しかし、子どもの出来ないことに目を向け、標準的な発達に近づけようとする「ボトムアップ式育児」では、効果がなかなか出ず、本人や周りの人も落胆してしまうことがあります。
それより、子どもが出来ること、出来ないことを把握し、出来ることをしっかり保証することから始める「トップダウン育児」で、いま出来ていることを中心にして見通しを立てるころから考えていけば、達成可能な目標が設定できます。
出来ることは保証し、出来ないことは補完して、スキルを身につけていきましょう。
練習・休養のバランスをとる
無理をしない「トップダウン式育児」でも、スキルを身につけるためには、多少の練習は必要です。
スキル取得の方法は、大きくわけて2つあります。
ひとつは、「子どもが課題の練習をする」こと。
一度でうまくいかなくても、反省したり、工夫したりしながら、じっくり課題に向き合います。
達成しやすい課題でも、練習は欠かせません。
もうひとつは、「保護者が課題のハードルを下げる」こと。
休憩を入れたり、目標そのものを調整して、達成しやすい状況を作ります。
子どもが乗り越えられそうなハードルを用意してもうまくいかない時は、課題設定が間違っていることも。
やり方を変えたり、やり直してもうまくいかない時は、課題設定が間違っている可能性も考慮し、保護者が課題を調整します。
また、適度な課題でも、疲れていたり調子がよくないと失敗しやすくなります。
「自閉症スペクトラム」の子は、体調の変化に鈍感な傾向があります。
疲れやストレスが溜まっていても、本人が気づかず頑張り続けたりするため、周りが配慮して、休ませた方がよいでしょう。
次回は、「各年代別の支援のポイント」を詳しく見ていきます。