強迫性障害ってどんな病気?-③
家族を巻き込む
「強迫性障害」で苦しむ人は、自分で強迫行為をするだけでなく、家族を巻き込んで不安をやわらげようとすることがあります。
家族に「これで大丈夫?」「これでいい?」などと繰り返したずねたり、家族にも同じようにしてもらいたがる傾向があります。
その際、拒絶するだけでは本人の不安を高めてしまいますが、協力しすぎるのも問題です。
本人のためと思って協力すると、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。
家族の制止
いつまでも終わらない強迫行為を身近に見ている家族が「早くやめさせたい」と思うのは当然のことです。
しかし、無理にやめさせようとすると、かえって問題がこじれてしまうおそれがあります。
パニック状態 無理に行為をやめたことで、不安が解消されず、不安と恐怖でパニック状態に陥る |
乱暴なふるまい 強迫行為が中断されたこといいらだち、乱暴なふるまいにおよんでしまうこともある |
本人・家族の看過
強迫症状は、いきなり重症の状態ではじまるわけではありません。
例えば、汚れに対する恐怖がある場合、はじめは入念な手洗い程度だったのに、いつの間にか手の皮がむけるほどの過剰な手洗いを繰り返すようになります。
だんだん症状が重くなり、やがて多くのものを触れない状態に。
周りの人はもちろん、本人でさえ、「性格の問題だから仕方ない」と放置せず、治療を考えていくことが大切です。
関連する病気
「強迫性障害」だけでなく、ほかの心の病気をあわせもつ人も多くいます。
併発する病気としては、うつ病や(強迫性障害以外の)不安障害が代表的です。
実際、「強迫性障害」とともに何らかのほかの心の病気もあわせもっていると診断される人は、三分の一にのぼるという報告もあります。
併発しやすい病気
うつ病
「強迫性障害」の人がうつ病を同時にわずらっている割合は約3割、一生の間にうつ病をわずらう人は、約半数以上にのぼると報告されています。
不安障害
●社交不安障害
人と接したり、人前でなにかすることに強い緊張と不安を覚え、人との接触をさける
●恐怖症
特定のものや場所、状況を過剰におそれる症状
●パニック障害
突然、激しい不安に襲われ、動悸、息苦しさ、発汗、震え、めまいなどの身体症状を繰り返す病気
関連のある病気
統合失調症
統合失調症で「強迫性障害」がみられることは少なくありません。
しかし、「強迫性障害」と診断されている人が、のちに統合失調症を発症する確率はまれで、一般の人と大差ないという見解が有力です。
パーソナリティ障害
ものの考え方や行動の仕方などが、一般の人と比べて著しく異なった状態になるのがパーソナリティ障害です。
パーソナリティ障害と、「強迫性障害」が同時にみられることは少なくありません。
【強迫性スペクトラム障害という考え方】
「強迫性障害」のほかにも、考え方や行動に強迫的な特徴がみられる病気があります。
「自分は太っている」という思い込みから食べない、あるいは吐く行動を繰り返す摂食障害、身体の一部が醜いと気に病む身体醜形障害、チックやトゥレット障害などです。
そこで、強迫傾向を示す障害を、強迫症状の程度や特徴によって分類し、強迫スペクトラム障害としてまとめようという考えが提唱されています。
次回は、「強迫性障害」の特徴、発症の原因、発症しやすい性格などを詳しくみていきます。