自閉症スペクトラム(ASD)ってどんな病気?-③

前回の「自閉症スペクトラム(ASD)」のその他の特徴はこちら

「自閉症スペクトラム(ASD)」の原因は何なのでしょうか?

原因としては、様々な要因が指摘されています。

ASDの原因

「自閉症スペクトラム(ASD)」は、先天的な脳機能障害だと考えられています。

「先天的」とは、生まれながらに存在する、という意味。

遺伝的な要因の関与が考えられますが、それがなにによって起こっているのか、詳細は分かっていません。

もともとの遺伝的な要素や、関連する因子を調べる研究が現在も進められています。

親が責任を感じることはない

1960年台に「母親が冷蔵庫のように冷たいこと」が原因とされたことがありましたが、この「冷蔵庫マザー」は、これまでの多くの研究によって否定されています。

親の生き方や育て方によって、子どもにASDが引き起こされることはありません。

生まれたあとの家庭生活が重要

親にASDの原因に対する責任はありませんが、そのあとの経過や成長に対する責任はあります。

子どもが生まれたあとの生活が、その子の将来にとって重要なのは確かです。

子どもの特性を理解して、必要な対応を行うことがとても大切だと言えます。

併存しやすい精神的・神経的な問題

「自閉症スペクトラム(ASD)」では、それ単体で生じる場合と、他の問題をあわせ持つ場合があります。

ASDと併存しやすいものは以下の通りです。

知的障害

子どもの頃から全般的な知能の発達が遅れ、成年期以降も知的水準が標準より低い状態で、生活に支障をきたすときに「知的障害」と診断されます。

知的水準の指標として、知能検査から算出される知能指数(IQ)が用いられ、大体IQ100が平均値とされています。

1980年台ごろまで、自閉症の人たちの大半は知的障害を併せ持っていると考えられていました。

しかし、その後、IQが低くない自閉症の人たちがかなり存在することが明らかになってきました。

さらに、自閉症の特徴が弱い人たちも自閉症スペクトラムとして含めると、知的障害のない人の方が大半を占めているのではないかと考えられています。

一方、知的障害がある人に焦点を向けると、知的障害の程度が重くなるほど、自閉症の特徴を持つ人の割合が増えることが指摘されています。

知的生涯
←→ 自閉症の特徴

 

中度知的障害(IQ50未満)の人では、ほぼ全例。

軽度知的障害(IQ50~70程度)を持つ人でも、過半数は自閉症スペクトラムの特徴がゼロとは言えない状態です。

今後は「自閉症スペクトラムの子どもの中の一部に、知的障害もみられる」という枠組みでの福祉政策に組み替えていく必要があるのかもしれません。

学習障害(LD)

「字の読み書き」「計算」などの学習行動のうち、一部(重複している場合もある)を極端に苦手としている状態を「学習障害(LD)」と言います。

例えば、ASDの子どもの場合、機械的記憶力は良いので、IQ100以上あるのに、小学生2年生になっても九九が覚えられない場合は、LDとの併存を疑います。

注意欠陥/多動性障害(ADHD)

「注意欠陥/多動性障害(ADHD)」とは、多動(落ち着きなく、いつも体のどこかを動かしていて静止が難しい)、衝動的(何か思いつくと、深く考えずにすぐ行動してしまう)、不注意(気が散りやすい、うっかりミスや忘れ物が多い)という特徴が幼少期から見られ、学年期以降も持続する状態です。

例えば、持ち物へのこだわりが強いわりには、忘れ物が多いという場合、ADHDとの併存が考えられます。

睡眠障害

ASDの人たちの一部に、なかなか寝つけない(入眠困難)、やっと寝ても夜中に目を覚まし、朝まで起きている(中途覚醒)、午後の変な時間に居眠りしてしまうなど、睡眠に異常が目立つ場合があります。

ASDの子どもに睡眠の異常があると、夜に寝ないでウロウロするため、家族も眠れないなど、生活全体が乱れることがあります。

また、自閉症の特徴が強い人で睡眠に異常がある場合、通常の睡眠導入剤(ベンゾジアゼピン系など)が効かないことが特徴です。

てんかん

自閉症の特徴が強く、知的障害を併存している人は、けいれんや意識の一時消失など、「てんかん」の合併が多いことが知られています。

典型的な自閉症では、一生のうちに一度でもてんかんを起こした人は、20~30%いると報告されています。

一般的に、初めてのてんかん発作は幼児期までに発生することが多いのですが、自閉症の人の場合、幼少期をはじめとして、青年期に初めててんかん発作を発症する人もいます。

なぜこの時期に初めて発作を起こすのかは、現在もまだよく解明されていません。


次回は、いじめ被害やうつなど「発生しやすい二次的な問題」をみていきます。

 

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