認知行動療法講座「早期不適応的スキーマ」
認知行動療法講座
前回は、下向き矢印法でうまくスキーマを見つけられなかった方のために、他の方法でスキーマを探しました。
今回は、小さい頃の両親等との関りによって作られる「早期不適応的スキーマ」についてご紹介します。
早期不適応的スキーマ
不適応的スキーマとは、自分に対して害をなしてしまうスキーマのことです。
スキーマは、思春期や成人後の体験からも作られるのですが、実のところ、大部分は幼い頃の経験によって、すでに作られていると言われています。
子ども時代、周囲の大人との関係によって作られるそのようなスキーマのことを「早期不適応的スキーマ」と呼び、5つの分類に分けることができます。
「ひとりぼっち・つながれない」スキーマ
親から、十分な愛情や承認が受けられなかった場合に作られるスキーマです。
「自分は人から必要とされる」「受け入れてもらえる」という感覚が作られないため、他者との関りに期待を持つのをやめることで己の心を守ろうとします。
「人はみんな、私のことを見捨てていく」
「人は私を虐待し、攻撃してくる」
「私は人に受け入れられない」
などのスキーマが含まれます。
「自信がない・ひとりじゃできない」スキーマ
子どもの頃、新しいことに挑戦し、自分の力でやり遂げるという経験を積むことで、「自信」が養われます。
一方で、失敗を親に厳しく叱られてしまったり、反対に過保護になんでもしてくれて、自分で挑戦する機会が作れなかったりすると、自分でできるという自信を持つことが十分にできません。
「自分一人では何もできない」
「生き残っていくには、自分を主張せず相手に同調しておく方が得策だ」
「自分は何をやっても失敗する」
などのスキーマが含まれます。
「他者優先」スキーマ
自分の感情を表に出したり、自分が何がしたいかを表現するなど、「自分を優先して良い」という感覚も、子どもの頃に作られます。
そのため、要求をするとわがままだと取り合ってもらえない、長男(長女)で小さい頃から我慢を強いられていた、親に余裕がなく、自分のことをする余裕がなかったなどの環境にいると、周囲から認められるためには、他者を優先しなければいけないのだ、という考えが強くなりすぎてしまいます。
「自分よりも相手を優先するのが当然のこと」
「自分の価値は他人の評価次第なのだ」
「嫌われたくない」
などのスキーマが含まれます。
「がんじがらめ」スキーマ
自由に過ごすことや、楽しく遊ぶことを子どものうちに体験しておくのも大切なことです。
高い目標で追い立てられたり、厳しい規則の中で育てられることで、そのような余裕が持てないと、休むことが苦手になったり、自分や他者に過剰に厳しくなってしまいます。
「頑張ってもうまくいきっこない」
「泣いたら弱い人間だと思われる」
「手抜きをせず、とことん努力をすべきだ」
などのスキーマが含まれます。
「野放し」スキーマ
物事の限度や社会的なルール、他者への思いやりなどを知ることも、幼い頃の経験によるものです。
そのため、それらを幼い頃に上手く示してもらうことができなければ、大人になってからも他者との間に不和を生む原因となってしまいます。
「特別扱いされるべきだ」
「やりたいことは今すぐやりたい、欲しいものは今すぐ欲しい」
「計画なんてどうでもいい」
などのスキーマが含まれます。